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57章 抹消8 [リリカルなのはss]

医院のスタッフの技量の高さと何より患者の身体能力の高さのおかげで、難手術は何とか成功した。
とはいうものの一時的に一命を取り留めたというだけのことで、まったくの予断を許さない状態であることには変わらない。

手術台からICUに移動させるためストレッチャーに移し、廊下に出たところで脇に置いた患者の私物を入れた篭から携帯の着信音が鳴る。
しばらくして留守電に変わり、発信者からのメッセージが吹き込まれる。
聞こえてきたのは妖艶な響きの女性の声、その内容は驚愕に値するものだった。

『お相手は相当焦れたみたいね、衛星軌道上から警告なしに魔導砲を撃つつもりみたいよ。
座標はメールで送っておくわ、お代は今度会った時にベットの上でね。
・・・守りたいなら急ぎなさい、恭也。』


クッ

「な、駄目です、置き上がったりしたら。
あなたは重傷を負って、絶対安静の身なんですよ。」

メッセージの内容の真偽を脳内で吟味していると、後ろから看護士さんの慌てる声が聞こえた。
まさかと思って振り返れば上半身を起こし、ストレッチャーから降りようと床に足を付ける彼の姿。

「何をやってるんですか!! 恭也さん。」
「シャマル先生、今すぐ俺をその座標に転送して下さい。」

「何を馬鹿なことを・・・そんな事できるわけないじゃ「いいからやるんだ。」ないですか。」

「すみません、でも時間がないんです。」
「それならザフィーラに行ってもらえば・・・」

「それでは駄目なんです、相手は俺がここにいる限り魔導砲を撃ってきます。
それを防ぐ為には奴の目の前に俺自身が行く必要があるんです。」

「・・・分かりました、でもせめてみんなに状況が伝わるようにサーチャーだけは付けさせて下さい。」

包帯で巻かれた裸の上半身に血染めの黒のジャケットを羽織り、『香月』と『八景』を携えた恭也さんをメールに記載された座標に送る。
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