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ワンコと猫 [リリカルなのはss 外伝]

「アリサ~、また男振ったんだって~?」

「何よ、人聞きが悪い。ただ単に、断っただけじゃない。」


中学のランチタイム、食べ終わって教室ですずかと話をしていると突然クラスメイトから声を掛けられた。
ちなみになのは達は向こうの用事で今日は三人ともお休み。

彼女は私達が中学に入学してからの知り合い、三年まで腐れ縁で同じクラス。
サバサバした性格で私と気が合って友人を続けている。
そのつながりで、すずかやなのは達とも友人関係にあるが彼女達の特殊な事情は知らない。


「それを、世の中的には”振る”って言うんだけどね。
 それにしてもこれでここ三ヶ月で3人目だっけ?流石は3大エースの面目躍如って感じっ!?」

ただ少しゴシップ好きなところがあって、ことあるごとに絡んでくるのは勘弁して欲しい所。
ちなみに3大エースとは告白してきた相手をことごとく振って(撃墜して)いる3人を揶揄したモノで、私、目の前のすずか、今日はお休みのフェイトの事である。


「でもさ~なんでまた断っちゃったの?相手、超エリート校の高校生だったんでしょ。
 将来有望なのにさ~。」

「別に、エリートなんかに興味ないし。
 上辺だけの男なんて惹かれないもの。」

そう、私が惹かれるのは身体的な強さだけじゃなく自らの信念を貫き通す心の強さを持ったあの人だけ。

「うわー、なんかかっこいいこと言ってる。
 でもでも・・・ここまで断ってばっかりって事は、ずばり好きな男がいるんでしょっ。」

「!!! いっいないわよッ。そんな、男(ヒト)なんて!」

焦りながらも返す私に彼女は疑わしげな眼差しを向け、さらに追求を重ねようとしてハタと何かに気付いたようにおののいて私から距離を取る。

「ごめん、アリサ。
 私、あんたのこと嫌いじゃないけどその想いは受け止められんわ。
 好きになるならやっぱり私は男の方がいい。」


スパーン

突如として現れたミニハリセンを持った別の女生徒が彼女の頭を思いっ切り叩く。
乱入してきたのは2年まで同じクラスだったもう一人の中学からの友人。

「チッチッチッ、アリサはね大人の男にしか興味がないのよ。」

「痛~、何よそれ?」

新たにやって来たその子は自信ありげに断言する。

「私、見たのよ、見ちゃったのよ。
 そう、それは爽やかに晴れ渡った先日の日曜日の午後・・・」

なぜかポエム調に語り出す彼女・・・正直、嫌な予感しかしない。

「海鳴の駅でモデル体型の年若い男性に笑顔全開で話し掛ける、金髪少女をッ!!」

「おぉ!!」
「(!!!)」

「その様子は大好きな飼い主にかまって欲しくて、周りをぐるんぐるん回るワンコの様!!
 私にはブンブン振られる尻尾が見えたわ。」

「(   ) 」

「普段のクールなアリサとあまりに違ったもんだから、思わず二度見しちゃったわよ。」


先日の日曜日といえば、偶然出かけた駅で久しぶりにあの人に会えて大はしゃぎをした覚えが確かにある。
そのことに思い至り、赤面していると前の席から小さな笑い声が聞こえてきた。



「何よ、すずか。笑うことないじゃない。」

「ごめんね、アリサちゃん。ただ、尻尾を振ってるアリサちゃんがあまりにもリアルに絵が浮かんじゃって・・・」

このまま私だけからかわれるのも癪に障るので、ちょっとした意趣返しを試みる。

「何よ、すずかだって猫が好きな人の足元に頭をこすり付けるみたいにべったりするくせに。」
「/// そ、そんなことないよ。」


「おっ?その話の流れだともしかして二人とも同じ相手を狙ってるとか?」
「へ~そうなんだ、って事は二人は親友であり恋敵(ライバル)でもあるって事なの?」


「「!!(///)」」

二人して真っ赤になりながら、なんとか追求を躱す。
正直恥ずかしい気持ちが半分、もう半分はあの人の事を知られてライバルを増やしたくなかったから。

お仕置き [リリカルなのはss 外伝]

中学卒業を間近に控えたある日、教導隊及び各執務官合同の大規模掃討作戦が突如中止になり放課後アリサの家に集まって卒業旅行の打ち合わせをすることになった。

私となのはは、なのはの家に寄って資料を持って向かう事になり制服姿のまま高町家にお邪魔した。

「ただいま~、あれ?お兄ちゃん急ぎの仕事でしばらくお留守だって言ってたんだけどもう帰って来てるのかな。」


玄関先には彼の靴があり、会えるかもと期待したが特に声がかかる事もなくなのはの『すぐ着替えて資料だけ持ってくるから、リビングで待ってもらっていい?』という申し出に従ってリビングに向かう。



「お邪魔してます」

リビングのドアを開けて、ソファーに黒髪の後ろ姿を見つけて少しうわずった声で挨拶をする。



いつもなら優しく返事をしてもらえる所なのに、今日はなぜか無反応。
機嫌でも悪いのかなとおそるおそる近づいて、そっと回り込んで目にした光景に驚きのあまり声を出しそうになって思わず口元を押さえる。

そこにはいつもなら決して見せない隙だらけと形容してもいいような状態で、瞳を閉じた彼がいた。
よほど疲れて熟睡しているのか、間近に近づいても起きる気配がない。
私はソファーの脇で膝を抱えて下からあの人の横顔を観察する。

長いまつげ、整った鼻筋、引き締まった口元。
意思の強さと無上の優しさを感じさせてくれる瞳は閉じられていても・・・

(・・・やっぱり、かっこいい)

穏やかに寝息を立てる彼の横顔をじっと見つめているとなんだか恥ずかしくなると同時に、なぜだか少し悔しい気持ちになる。

「ずるいですよ、恭也さん。
 私がこんなにドキドキしてるのに、あなたはそんなに落ち着いているなんて・・・」


前に彼が歌姫達にされて顔を真っ赤にして照れていたことを思い出し、私も実践してみることにした。

「だから、お仕置きしちゃいますね。」


 



「フェイトちゃん、何かあった?顔真っ赤だよ。」

お仕置きが終わって慌ててリビングを出た所で、二階から降りてきたなのはに声を掛けられて思わずどもってしまったのはまた別のお話。

58章 本棚13 [リリカルなのはss]

事後処理のある恭也さんをおいて、私達は先に帰還することになりノエルさんの運転するバンで転送ポートまで移動することになった。

バンの脇で恭也さんと忍が何事か打ち合わせをしている間に、私はあの子の腕を引っ張り物陰に連れて行き二人っきりになった所で秘密の計画を耳打ちする。

「え…でも、恥ずかしいよ」

内気なあの子は案の定、乗り気ではないようだ。
でも、これだけ怖い思いをしたんだもの、少しくらいはいい思い出を作ったっていいと思う。

「そう、すずかはいらないのね。じゃぁ、私が一人で貰っちゃうね。」
「そ、そんなずるいよアリサちゃん。私だって…欲しいよ。」
「じゃぁ、するのね。」
(コクン)



いざお別れの段になってみんながバンに乗り込みエンジンを掛けた後、私がおもむろに声を上げ『忘れ物をした』とすずかと一緒に車を降りる。

怪訝そうな顔で見つめてくる恭也さんの両脇に立ち、それぞれ肩に手を掛け・・・左右同時に唇に限りなく近い位置に感謝の口付けをする。

二人とも真っ赤になりながら車に駆け込む。

「いや~私もするの~」

助手席で叫ぶ、忍を乗せて車は発進。


遠ざかる彼に窓から身を乗り出して告げる。

「「恭也さん、私達からの感謝の気持ちです。」」

58章 本棚12 [リリカルなのはss]

「すずかー」

黒焦げの男達を踏みつけながら駆け寄って来る迷彩服姿の忍の声を聞いて、ようやくあの子が目を開ける。
彼に無言で背中を押され、一瞬彼と目を合わせた後 彼女も同じように駆け出す。

合流して抱き合い涙を流す姉妹の姿は麗しい。

「羨ましいか…?」

その美しい光景を見ながら複雑な表情を浮かべる私に、恭也さんはそっと尋ねる。
資産家の一人娘の私には、心底私を愛してくれる身内は皆無に近い。
妬みや逆恨みの対象として阻害され、心身ともに危害を加えられ実際に身内の依頼を受けた男達に誘拐されて乱暴されそうになった事だってあった。

だからこうして命を張って助けに来てくれる、家族がいるあの子が羨ましくないと言えば嘘になる。
でも私は知っている、そんな私にもこうして命懸けで助けに来てくれる人がいる事を、そして事態を知ったら立場とか身の危険とか顧みずに助けに来ようとするどうしようもない馬鹿な友人がいる事も。

「デビットさんも鮫島さんも来れるなら来てたさ、行きたくても来れないから大事なアリサを俺に託したんだ。」
「うん、分かってます。パパ 私に甘いから、無茶してなければいいけど。」

笑顔で頷く私の頭をクシャッと撫でて、恭也さんが笑みを見せる。
子供っぽい所を見られた気がして照れ臭くて間が持たなくなってきたところで第三者に声を掛けられた。


「恭也様、アリサお嬢様、ご無事で何よりです。」

「ああ、お疲れ様、ノエル。忍の護衛、助かったよ。」
「ノエルさん、ありがとうございます。」

「いいえ、それが私の務めですから。」

いつも通りの抑揚のない受け答えではあるが彼女のその答えには誇りを感じた。



「ちょっと、姉さんには礼を言ってあたしにはなしなのッ!?」

突如、会話に割り込んできた金髪美人。

「悪かった、イレインとファリンのおかげで安全に脱出することができた。とても感謝してる。」

「ふ、ふーん、わ、わかればいいのよ。そうよちゃんと感謝しなさいよね、あたしが手伝ってあげる事なんてめったにないんだからね。」

恭也さんに真剣な眼差しで告げられたイレインは珍しく顔を紅潮させて強がる。
相好を崩し再度謝辞を述べる彼、

「ああ、ありがとう。」

「べ、べつにまたなんか手伝って欲しいことがあったら考えてあげなくてもいいわよ。」

イレインってこんなに"ツンデレ"属性だったっけ、て事を思いながら見ていると忍達がやって来た。

58章 本棚11 [リリカルなのはss]

地上まで戻る道中、恭也さんは自らの後ろを歩くように指示する。
脅威は既に排除してあるが、不測の事態に備えてとのことだった。

監禁部屋を出て薄暗い廊下を三人で進みながら、今回の救出までの流れを教えてもらった。

私達が誘拐された後目撃していた人から警察に通報が入った際、たまたまそこに居合わせたリスティさんが被害者の特徴から誘拐されたのが私達だと気付き、すぐに忍と恭也さんに連絡を入れると同時にそのネットワークを使って包囲網を張ってくれたそうだが一足違いで地球から連れさられてしまったそうだ。

その後は私達の持っていた忍特製の携帯の位置情報を元に監禁場所を割り出し、監禁建物の設備・構造及び見取り図を分析、犯人側の戦力・戦術及び目的の解析を行い、なのは達管理局メンバーに応援を要請するのは悪手と判断。

最初は恭也さん単独で乗り込むつもりだったらしいが、相手の電子装備対策と怯え震えているであろう最愛の妹を助けたいという忍のたっての願いを聞き入れてノエルさんをガードにつける事を絶対条件に同行させたそうだ。

現地に着いてからまず、ネットワークを介して館内の電子システムをハッキングしセキュリティ及び館内設備を乗っ取る。
ここで犯人側のモニター室に映る監視カメラの映像と音声をあらかじめ記録しておいた平常時のものに順次切り替えると同時に相手無線に対して強力なジャミングを掛けた。
続いて死角から館内に侵入した恭也さんが空調のダクトに忍特製の睡眠ガス発生装置を設置し、乗っ取った館内空調をを利用して戦闘員が待機している各部屋にガスを流し込み無力化。
なんでもそのガスは強力なもので明日の昼までは目を覚ます事はないそうだ。
ついでに目覚めた後は強烈な二日酔いに似た頭痛が丸一日続くそうだが、自業自得というものだろう。

それらの行程が完了したのを見計らって恭也さんが移動を開始、途中 見回り警戒中の戦闘員を音もなく排除し拘束の上死角に放置。
B2のモニタールームのオペレーターをそのままにしておいて、他のメンバーに発見されると面倒だったため一旦そちらに向い2人を死角に隠し、内線のケーブルを死角になる位置で切断。

エレベーター前に戻った所で下から新たに2人が上がってくるのを察知、物陰に隠れてやり過ごそうとするも後から下りた男が何の気の迷いか首だけを後ろに回した際、暗闇の中、目が合ってしまう。
仕方なしに男の口を左手で塞ぎ、右手で小刀を喉元に突き立てドアの閉まりかけていたエレベーターに連れ込む。
ドアが完全に閉った所で、右手を外し掌で男の後頭部を前に思いっきり押し付ける。
鈍い音がして鼻が潰れた男が意識を失う。

このまま放置して監禁部屋まで向う事も考えたが、下手に先程やり過ごした犯人に見つかり外の連中に連絡をつけられるのは得策でないと判断してエレベーターの天板を外して上に上がり、鋼糸で男を吊り上げる。
天板を閉めた所で先程やり過ごしたもう一人の男が篭に乗り込みB3のボタンを押す。
程なくして男が天井に向って拳銃を構えるのが見えた。そこで恭也さんは自らのミスに気付いたそうだ、何しろ自分の足元には先程引き上げた男が流した血が水溜りのように広がっていたのだから。

慌てて血まみれの男を射線から外し、自らも脇に退く。
篭の中の男の弾が尽きた所でB3に到着、ドアが開いた所で天板を割り血まみれの男を頭から降ろす。
あまりの恐怖に腰砕けになっている痩せ男の背後に降り立ち背後より殴りつける。

その後、忍からすずかの貞操の危機の無線が入り、神速を発動して私達を助けるに至ったとのことだった。


確かにB3のエレベーターでは、うつ伏せで倒れた痩せ男の腰にドアが当たって閉ったり開いたりを繰り返しておりそのすぐ上には血まみれの後頭部が見えた。
(どんだけのホラーよ・・・)

うしろの空気を感じ取ったのか、前を行く恭也さんは苦笑しながら声を掛けてくれた。
『二人とも、少しの間目を瞑っててくれるか。ちょっと、あれをどけてくるから。』そう言って手早く、ニ体の死体もどきを拘束の上脇に転がす。

「もう目を開けてもいいぞ、二人とも。」

前を向いたままの恭也さんにそう言われて、すずかがギュッと閉じていた瞼を恐る恐る開ける。
ニ・三歩進んだ所で目の端にそれが入ったのか小さく悲鳴を上げて、再び強く瞼を閉じ前を行く恭也さんの上着の裾を強く摘まむ。

すずかの気持ちが分かるのか恭也さんはそれに対して何か言うでもなく、私達に注意する。
「エレベーターの中がかなり散らかってるから怪我をしないように気を付けろよ。」


その後は、特にアクシデントもなく外に出られた。
外は時間帯としては既に深夜だったらしく暗闇が広がっていたが、建物から漏れる光と炎上する車両の揺らめきが阿鼻叫喚の地獄絵図を映し出していた。

58章 本棚10 [リリカルなのはss]

「さて、そろそろお暇するとしよう。」

(コクン)

「と、その前にこのふざけたパーティに招待してくれたホストに挨拶だけしていくか。」

頷く私達を確認した後、恭也さんはドアの方を見て呟く。
入って来たのはクライアントと言われていた眼鏡の女。
警戒した様子でこちらを伺いながら彼の背中に問うてくる。

「外がやけに騒がしいみたいだけど、何かあったの?
それに何でそいつらの拘束を解いてるの。」

「なに、外でダンスパーティが開かれてるんだ。
だから、こうして二人を誘いに来たのさ。」

ゆっくり振り返りながら答える恭也さんに、異常を感じ壁際の内線を見ながらさらに質問を重ねる。

「あなた、何者?」
「なに、招かざる客だよ。」

小太刀の柄にゆっくりと手を掛け、近付く恭也さんに女は身の危険を感じたようで内線に跳びつき館内放送で異常事態発生をコールするがしばらくしても何の動きもないことに焦り出す。
そうこうする内に目の前に迫った黒尽くめ。
一縷の望みを託して訴える。

「あなた、男のくせに武器も持たない無抵抗の女を痛めつけようっていうのッ!!」
「悪いな、俺は男女で差別はしない主義なんだ。」

苦笑を浮かべて言うが早いか、柄頭を鳩尾に打ち込みその意識を刈る。
基本フェミニストの彼が犯罪者とはいえ女性にここまでの事をしたという事は、今回の件に関して相当怒っていたという事だろう。
それが何となく分かって少し嬉しかった、自分達の大好きな人が私達の為に真剣に怒ってくれたのが。

58章 本棚9 [リリカルなのはss]

解放された無線から伝わってくる外の様子は正しく渾沌(カオス)そのものだった。

『忍お嬢様特性グレネード[バリドカ君 7号] 発射~!!』

HYUUuuuu Dogannn

「どうした?どこから攻撃された!?」
「わからんッ、トラックがやられた。各自、降りて応戦しろ。」

『メイド2、お嬢様の事はチーフと呼びなさい。』
『はーい、ごめんなさ~い、おねーさま。』

ファリンを注意するノエルさんも自分がコールの人物を暴露してしまっている事に気付いていないみたい。

『出てきたな虫けらども、チーフ新開発の特殊弾丸[七転八倒]をその身でとくと味わうですよ。』

Zugagagagagaaaaa

「なんで、メイドがこんなところにいるんだ!?」
「そんな事より、あんな華奢な少女が重機関銃をぶっ放してるんだよッ!!」
「メイド服と機関銃 サイコー!!」


「応戦は無理だ、反対側に逃げろ。」
「駄目だ、向こうには女王様がいるッ。」


『ちょっとッ忍!! オミットし過ぎよ。こんな出力じゃ、丸焼きにできないじゃないのよ。』

バシッ

「しびれる~」
「女王様~、もっとぶって~」


『うふふふふ、いいわ、いいわよ、ファリン、もっとやっちゃいなさい。
貴重な対人の実験データがたくさん採れるわ♪』
『チーフ、コールが違います。加えて作戦の趣旨とずれています・・・』

『もうノエルったら、真面目なんだから。
コールなんて気にしなくてもいいわよ、どうせ誰も聞いちゃないんだし。
それに恭也相手だと、避けるか破壊しちゃうから碌にデータ採れないんだもん。』
『まともに喰らったら半年は病院送りになるような攻撃を恭也様に仕掛けるのもどうかと思いますが。』

『・・・恭也だからいいの(汗)、それよりノエルも加勢してきて、日頃のストレス発散になるかもよ。』
『いいえ、恭也様よりお嬢様をお守りするようにと厳命されておりますので離れるわけにはまいりません。』
『ふーん、ノエルったら私のお願いより恭也の命令を取るんだ。女の友情なんて異性への愛の前では儚いものなのね。』

『私のお嬢様に対する忠義はゆるぎないものですが、この場においては恭也様の判断を支持致します。』


10分程して静寂が訪れ、無線機越しにコールされる。

「恭也~、外の掃除は終わったよ~。
お姫様達を地上までエスコートしてあげてね。」

58章 本棚8 [リリカルなのはss]

「今すぐその汚い手と顔をその子から離せ。」

低く冷たい声、でもその響きはいつだって私の胸を熱くする。



突然攫われて監禁された私達、不安に震える私をアリサちゃんが励ましてくれる。
そう私も信じてる、きっと今回も助けに来てくれるって・・・。

貞操の危機が迫って親友が必死に抵抗してくれているのに、私は怯えて何もできない。
忌み嫌った能力を解放すればアリサちゃんだけでも助けられるかもしれないのに、あの時と同じように恐怖に瞳を閉じてしまう。

耳元に生温かい息が吹きかけられた時、震えと同時に心であの人の名を呼ぶ。

あの人の声を聞いた後の事は、あまりハッキリとは覚えていない。
覚えているのは拘束を解かれて頭を優しく撫でられた所から・・・。

親友の拘束を解除するあの人の大きな背中をボーと見つめていると、あの時の光景がフラッシュバックした。



イレインの襲撃事件が終わってしばらく経った頃、お姉ちゃんに呼ばれて遊びに来てくれていたあの人に帰り際の玄関先で気になっていた事を尋ねてみた。

「付き合っている人とかいるんですか?」

「まさか。
そもそもこんな無愛想な面白みのない男に好意を持ってくれる女性もいないだろうしな。」

「そんな事ないですよ、少なくとも私は好きですよ、恭也さんの事。」

「そうか、ありがとな、すずか。」

そう言って、なのはちゃんにするみたいにくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
その時、私の気持ちの抑えは効かなくなった。

(やっぱり嫌だ、この気持ちを諦めるなんて)

恭也さんが帰って、リビングで一人くつろいでいるお姉ちゃんの所に向う。

「どうしたの?すずか」

「…ごめんなさい、お姉ちゃん。やっぱり無理だよ。」

いきなり涙を浮かべながら現れた私に理由を尋ねるお姉ちゃんに脈絡もなく謝る。

「お姉ちゃんのこと大好きだから、恭也さんと幸せになって欲しいと思って一生懸命諦めようと頑張ったけど・・・そう思えば思うほど辛くて切なくて忘れられなくて、諦められないの。」

「バカね・・・」
優しくそう言って、ゆっくりと私を抱きしめてくれる。

「・・・」

「忘れる必要も諦める必要もどこにもないじゃないの。あなたの想いはあなただけのもの、私に遠慮する必要なんてどこにもないのよ。」

「・・・でも・・・」

ゆっくりと私を解放し、屈んで目線を合わせ人差し指で私の涙を拭いながら茶目っけたっぷりの笑顔で告げる。

「心配しなくても大丈夫よ、私は誰にも負ける気はないから。もちろん、あなたにもね。」

自信に満ちたお姉ちゃんの顔は世界中の誰よりも輝いて綺麗だった。

「うん、でも私だって負けないよ。きっとお姉ちゃんより綺麗になって恭也さんに振り向いてもらうんだから。」

「ふふ、10年早いわ。」

ちょんっと、おでこを小突かれた。



あれから10年、お姉ちゃんはますます綺麗になって全然勝てる気はしないけど、でもこの想いは絶対に誰にも負けない。
だから恥ずかしくて言葉にできなくても少しでも伝えたい、そう思ったらいつの間にかあの人の背中に飛び込んでいた。
腕を回し硬く広い背中を強く抱きしめて、静かに涙を流す。

58章 本棚7 [リリカルなのはss]

彼は倒れた男を素早く拘束しすずかの戒めを解いた後、彼女をひと撫でしてから私の方に向い両手足の拘束を解いてくれる。

小さく笑みを見せてくれた彼に感極まって、抱きつこうとした瞬間にあの子に先を越された。
ぶつかるような勢いで背中から両腕を回して抱きついた彼女、表情は彼の広い胸板に隠されて伺えなかったけど震える肩が如実にその様子を語っていた。

彼は何を言うでもなくただ静かに立ち、好きにさせていた。
まるでそれは父親が愛娘を慈しむかのように。

しばらくしてすずかが落ち着いたのを見計らって彼が口を開く。

「遅くなってすまなかったな、二人とも。
取り乱さずによく頑張った、もう大丈夫だから、後少し我慢してくれ。」

そう言ってからおもむろにポケットから取り出した小型無線イヤホンマイクをジャックから外し、通信ボタンを押してコールする。

「・・・"ブラックナイト"より各員、人質二人の安全は確保した。
各々作戦行動に移ってくれ。」

「"チーフ"、了解♪」
「"メイド1"、了解しました。」
「"メイド2"、りょーかいです。」

「・・・"ニート"了解 って、何であたしがこんな恥ずかしいコールしなきゃいけないのよ!!」

彼が珍しくどもりながらコールした後に聞こえてきた返信は何とも気の抜けるものだった。

「恭也さん、今の声って・・・。
それに"ブラックナイト"って・・・?」

「言ってくれるな、アリサ・・・。
"チー じゃなくて忍が悪乗りしてな、言わなきゃ協力しないって脅してきたんだよ。」

心底くたびれた様子で事情を説明してくれる恭也さん。

「そうだったんですか、忍らしいですね。」

「まあそうでもしなければ不安で押し潰されそうだったんだろうけどな、あいつは。」

でも何だかんだ言って彼女の心情を慮って乗ってあげる優しい人。
そんな彼だから、私も本音を伝える。

「でもピッタリだと思いますよ、恭也さんのコールネーム。
私やすずかにとっては正しく"騎士(ナイト)さま"ですから。」

困惑の表情を浮かべ恥ずかしそうに頬を掻く彼を可愛いと思ってしまった。

58章 本棚6 [リリカルなのはss]

「今すぐその汚い手と顔をその子から離せ。」
「何者だ?テメェ。」

首筋に刃物を添えられた状態で声を出せる男は大した胆力なのかもしれない。
微塵も感心も尊敬もしないけど。

「唯の付添いだ。
それより答えはどうした?自分で出来ないなら斬り落として目的を達するだけだぞ。」

首筋に当てられた刃に力が篭もり、紅い線が切先に走る。
それを受けて男が肘を直角に曲げわざとらしくゆっくり大きく両手を上げる。
右手を止めた瞬間、袖口に隠していたと思われる飛び出しナイフの刃が跳ね上がる。

「テメェが"王子さま"ってかッ!!」

今までの緩慢とした動きから打って変って、集中して見ていた私の目で何とか追える程の俊敏な動作で男が背後の襲撃者をナイフで薙ぐ。

zasuu

何かが肉を断つような鈍い音が室内に響き渡る。
見れば男の手に金属棒が刺さっていた。
痛みのあまりナイフを取り落としその場に膝をついて蹲る男に襲撃者は冷たく言い放つ。

「この子達の前じゃなければ手首ごと斬り落としてたところだぞ。
凄惨な光景は見せたくないんでな、しばらくそこで大人しくしてろ。」
「"悪霊"の方だったか・・・」

刀の鞘で首筋に強烈な一撃を喰らい、悪態を吐きながら崩れる男。
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