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58章 本棚12 [リリカルなのはss]

「すずかー」

黒焦げの男達を踏みつけながら駆け寄って来る迷彩服姿の忍の声を聞いて、ようやくあの子が目を開ける。
彼に無言で背中を押され、一瞬彼と目を合わせた後 彼女も同じように駆け出す。

合流して抱き合い涙を流す姉妹の姿は麗しい。

「羨ましいか…?」

その美しい光景を見ながら複雑な表情を浮かべる私に、恭也さんはそっと尋ねる。
資産家の一人娘の私には、心底私を愛してくれる身内は皆無に近い。
妬みや逆恨みの対象として阻害され、心身ともに危害を加えられ実際に身内の依頼を受けた男達に誘拐されて乱暴されそうになった事だってあった。

だからこうして命を張って助けに来てくれる、家族がいるあの子が羨ましくないと言えば嘘になる。
でも私は知っている、そんな私にもこうして命懸けで助けに来てくれる人がいる事を、そして事態を知ったら立場とか身の危険とか顧みずに助けに来ようとするどうしようもない馬鹿な友人がいる事も。

「デビットさんも鮫島さんも来れるなら来てたさ、行きたくても来れないから大事なアリサを俺に託したんだ。」
「うん、分かってます。パパ 私に甘いから、無茶してなければいいけど。」

笑顔で頷く私の頭をクシャッと撫でて、恭也さんが笑みを見せる。
子供っぽい所を見られた気がして照れ臭くて間が持たなくなってきたところで第三者に声を掛けられた。


「恭也様、アリサお嬢様、ご無事で何よりです。」

「ああ、お疲れ様、ノエル。忍の護衛、助かったよ。」
「ノエルさん、ありがとうございます。」

「いいえ、それが私の務めですから。」

いつも通りの抑揚のない受け答えではあるが彼女のその答えには誇りを感じた。



「ちょっと、姉さんには礼を言ってあたしにはなしなのッ!?」

突如、会話に割り込んできた金髪美人。

「悪かった、イレインとファリンのおかげで安全に脱出することができた。とても感謝してる。」

「ふ、ふーん、わ、わかればいいのよ。そうよちゃんと感謝しなさいよね、あたしが手伝ってあげる事なんてめったにないんだからね。」

恭也さんに真剣な眼差しで告げられたイレインは珍しく顔を紅潮させて強がる。
相好を崩し再度謝辞を述べる彼、

「ああ、ありがとう。」

「べ、べつにまたなんか手伝って欲しいことがあったら考えてあげなくてもいいわよ。」

イレインってこんなに"ツンデレ"属性だったっけ、て事を思いながら見ていると忍達がやって来た。

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