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58章 本棚11 [リリカルなのはss]

地上まで戻る道中、恭也さんは自らの後ろを歩くように指示する。
脅威は既に排除してあるが、不測の事態に備えてとのことだった。

監禁部屋を出て薄暗い廊下を三人で進みながら、今回の救出までの流れを教えてもらった。

私達が誘拐された後目撃していた人から警察に通報が入った際、たまたまそこに居合わせたリスティさんが被害者の特徴から誘拐されたのが私達だと気付き、すぐに忍と恭也さんに連絡を入れると同時にそのネットワークを使って包囲網を張ってくれたそうだが一足違いで地球から連れさられてしまったそうだ。

その後は私達の持っていた忍特製の携帯の位置情報を元に監禁場所を割り出し、監禁建物の設備・構造及び見取り図を分析、犯人側の戦力・戦術及び目的の解析を行い、なのは達管理局メンバーに応援を要請するのは悪手と判断。

最初は恭也さん単独で乗り込むつもりだったらしいが、相手の電子装備対策と怯え震えているであろう最愛の妹を助けたいという忍のたっての願いを聞き入れてノエルさんをガードにつける事を絶対条件に同行させたそうだ。

現地に着いてからまず、ネットワークを介して館内の電子システムをハッキングしセキュリティ及び館内設備を乗っ取る。
ここで犯人側のモニター室に映る監視カメラの映像と音声をあらかじめ記録しておいた平常時のものに順次切り替えると同時に相手無線に対して強力なジャミングを掛けた。
続いて死角から館内に侵入した恭也さんが空調のダクトに忍特製の睡眠ガス発生装置を設置し、乗っ取った館内空調をを利用して戦闘員が待機している各部屋にガスを流し込み無力化。
なんでもそのガスは強力なもので明日の昼までは目を覚ます事はないそうだ。
ついでに目覚めた後は強烈な二日酔いに似た頭痛が丸一日続くそうだが、自業自得というものだろう。

それらの行程が完了したのを見計らって恭也さんが移動を開始、途中 見回り警戒中の戦闘員を音もなく排除し拘束の上死角に放置。
B2のモニタールームのオペレーターをそのままにしておいて、他のメンバーに発見されると面倒だったため一旦そちらに向い2人を死角に隠し、内線のケーブルを死角になる位置で切断。

エレベーター前に戻った所で下から新たに2人が上がってくるのを察知、物陰に隠れてやり過ごそうとするも後から下りた男が何の気の迷いか首だけを後ろに回した際、暗闇の中、目が合ってしまう。
仕方なしに男の口を左手で塞ぎ、右手で小刀を喉元に突き立てドアの閉まりかけていたエレベーターに連れ込む。
ドアが完全に閉った所で、右手を外し掌で男の後頭部を前に思いっきり押し付ける。
鈍い音がして鼻が潰れた男が意識を失う。

このまま放置して監禁部屋まで向う事も考えたが、下手に先程やり過ごした犯人に見つかり外の連中に連絡をつけられるのは得策でないと判断してエレベーターの天板を外して上に上がり、鋼糸で男を吊り上げる。
天板を閉めた所で先程やり過ごしたもう一人の男が篭に乗り込みB3のボタンを押す。
程なくして男が天井に向って拳銃を構えるのが見えた。そこで恭也さんは自らのミスに気付いたそうだ、何しろ自分の足元には先程引き上げた男が流した血が水溜りのように広がっていたのだから。

慌てて血まみれの男を射線から外し、自らも脇に退く。
篭の中の男の弾が尽きた所でB3に到着、ドアが開いた所で天板を割り血まみれの男を頭から降ろす。
あまりの恐怖に腰砕けになっている痩せ男の背後に降り立ち背後より殴りつける。

その後、忍からすずかの貞操の危機の無線が入り、神速を発動して私達を助けるに至ったとのことだった。


確かにB3のエレベーターでは、うつ伏せで倒れた痩せ男の腰にドアが当たって閉ったり開いたりを繰り返しておりそのすぐ上には血まみれの後頭部が見えた。
(どんだけのホラーよ・・・)

うしろの空気を感じ取ったのか、前を行く恭也さんは苦笑しながら声を掛けてくれた。
『二人とも、少しの間目を瞑っててくれるか。ちょっと、あれをどけてくるから。』そう言って手早く、ニ体の死体もどきを拘束の上脇に転がす。

「もう目を開けてもいいぞ、二人とも。」

前を向いたままの恭也さんにそう言われて、すずかがギュッと閉じていた瞼を恐る恐る開ける。
ニ・三歩進んだ所で目の端にそれが入ったのか小さく悲鳴を上げて、再び強く瞼を閉じ前を行く恭也さんの上着の裾を強く摘まむ。

すずかの気持ちが分かるのか恭也さんはそれに対して何か言うでもなく、私達に注意する。
「エレベーターの中がかなり散らかってるから怪我をしないように気を付けろよ。」


その後は、特にアクシデントもなく外に出られた。
外は時間帯としては既に深夜だったらしく暗闇が広がっていたが、建物から漏れる光と炎上する車両の揺らめきが阿鼻叫喚の地獄絵図を映し出していた。
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