58章 本棚8 [リリカルなのはss]
「今すぐその汚い手と顔をその子から離せ。」
低く冷たい声、でもその響きはいつだって私の胸を熱くする。
突然攫われて監禁された私達、不安に震える私をアリサちゃんが励ましてくれる。
そう私も信じてる、きっと今回も助けに来てくれるって・・・。
貞操の危機が迫って親友が必死に抵抗してくれているのに、私は怯えて何もできない。
忌み嫌った能力を解放すればアリサちゃんだけでも助けられるかもしれないのに、あの時と同じように恐怖に瞳を閉じてしまう。
耳元に生温かい息が吹きかけられた時、震えと同時に心であの人の名を呼ぶ。
あの人の声を聞いた後の事は、あまりハッキリとは覚えていない。
覚えているのは拘束を解かれて頭を優しく撫でられた所から・・・。
親友の拘束を解除するあの人の大きな背中をボーと見つめていると、あの時の光景がフラッシュバックした。
イレインの襲撃事件が終わってしばらく経った頃、お姉ちゃんに呼ばれて遊びに来てくれていたあの人に帰り際の玄関先で気になっていた事を尋ねてみた。
「付き合っている人とかいるんですか?」
「まさか。
そもそもこんな無愛想な面白みのない男に好意を持ってくれる女性もいないだろうしな。」
「そんな事ないですよ、少なくとも私は好きですよ、恭也さんの事。」
「そうか、ありがとな、すずか。」
そう言って、なのはちゃんにするみたいにくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
その時、私の気持ちの抑えは効かなくなった。
(やっぱり嫌だ、この気持ちを諦めるなんて)
恭也さんが帰って、リビングで一人くつろいでいるお姉ちゃんの所に向う。
「どうしたの?すずか」
「…ごめんなさい、お姉ちゃん。やっぱり無理だよ。」
いきなり涙を浮かべながら現れた私に理由を尋ねるお姉ちゃんに脈絡もなく謝る。
「お姉ちゃんのこと大好きだから、恭也さんと幸せになって欲しいと思って一生懸命諦めようと頑張ったけど・・・そう思えば思うほど辛くて切なくて忘れられなくて、諦められないの。」
「バカね・・・」
優しくそう言って、ゆっくりと私を抱きしめてくれる。
「・・・」
「忘れる必要も諦める必要もどこにもないじゃないの。あなたの想いはあなただけのもの、私に遠慮する必要なんてどこにもないのよ。」
「・・・でも・・・」
ゆっくりと私を解放し、屈んで目線を合わせ人差し指で私の涙を拭いながら茶目っけたっぷりの笑顔で告げる。
「心配しなくても大丈夫よ、私は誰にも負ける気はないから。もちろん、あなたにもね。」
自信に満ちたお姉ちゃんの顔は世界中の誰よりも輝いて綺麗だった。
「うん、でも私だって負けないよ。きっとお姉ちゃんより綺麗になって恭也さんに振り向いてもらうんだから。」
「ふふ、10年早いわ。」
ちょんっと、おでこを小突かれた。
あれから10年、お姉ちゃんはますます綺麗になって全然勝てる気はしないけど、でもこの想いは絶対に誰にも負けない。
だから恥ずかしくて言葉にできなくても少しでも伝えたい、そう思ったらいつの間にかあの人の背中に飛び込んでいた。
腕を回し硬く広い背中を強く抱きしめて、静かに涙を流す。
低く冷たい声、でもその響きはいつだって私の胸を熱くする。
突然攫われて監禁された私達、不安に震える私をアリサちゃんが励ましてくれる。
そう私も信じてる、きっと今回も助けに来てくれるって・・・。
貞操の危機が迫って親友が必死に抵抗してくれているのに、私は怯えて何もできない。
忌み嫌った能力を解放すればアリサちゃんだけでも助けられるかもしれないのに、あの時と同じように恐怖に瞳を閉じてしまう。
耳元に生温かい息が吹きかけられた時、震えと同時に心であの人の名を呼ぶ。
あの人の声を聞いた後の事は、あまりハッキリとは覚えていない。
覚えているのは拘束を解かれて頭を優しく撫でられた所から・・・。
親友の拘束を解除するあの人の大きな背中をボーと見つめていると、あの時の光景がフラッシュバックした。
イレインの襲撃事件が終わってしばらく経った頃、お姉ちゃんに呼ばれて遊びに来てくれていたあの人に帰り際の玄関先で気になっていた事を尋ねてみた。
「付き合っている人とかいるんですか?」
「まさか。
そもそもこんな無愛想な面白みのない男に好意を持ってくれる女性もいないだろうしな。」
「そんな事ないですよ、少なくとも私は好きですよ、恭也さんの事。」
「そうか、ありがとな、すずか。」
そう言って、なのはちゃんにするみたいにくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
その時、私の気持ちの抑えは効かなくなった。
(やっぱり嫌だ、この気持ちを諦めるなんて)
恭也さんが帰って、リビングで一人くつろいでいるお姉ちゃんの所に向う。
「どうしたの?すずか」
「…ごめんなさい、お姉ちゃん。やっぱり無理だよ。」
いきなり涙を浮かべながら現れた私に理由を尋ねるお姉ちゃんに脈絡もなく謝る。
「お姉ちゃんのこと大好きだから、恭也さんと幸せになって欲しいと思って一生懸命諦めようと頑張ったけど・・・そう思えば思うほど辛くて切なくて忘れられなくて、諦められないの。」
「バカね・・・」
優しくそう言って、ゆっくりと私を抱きしめてくれる。
「・・・」
「忘れる必要も諦める必要もどこにもないじゃないの。あなたの想いはあなただけのもの、私に遠慮する必要なんてどこにもないのよ。」
「・・・でも・・・」
ゆっくりと私を解放し、屈んで目線を合わせ人差し指で私の涙を拭いながら茶目っけたっぷりの笑顔で告げる。
「心配しなくても大丈夫よ、私は誰にも負ける気はないから。もちろん、あなたにもね。」
自信に満ちたお姉ちゃんの顔は世界中の誰よりも輝いて綺麗だった。
「うん、でも私だって負けないよ。きっとお姉ちゃんより綺麗になって恭也さんに振り向いてもらうんだから。」
「ふふ、10年早いわ。」
ちょんっと、おでこを小突かれた。
あれから10年、お姉ちゃんはますます綺麗になって全然勝てる気はしないけど、でもこの想いは絶対に誰にも負けない。
だから恥ずかしくて言葉にできなくても少しでも伝えたい、そう思ったらいつの間にかあの人の背中に飛び込んでいた。
腕を回し硬く広い背中を強く抱きしめて、静かに涙を流す。
2014-05-10 07:00