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58章 本棚7 [リリカルなのはss]

彼は倒れた男を素早く拘束しすずかの戒めを解いた後、彼女をひと撫でしてから私の方に向い両手足の拘束を解いてくれる。

小さく笑みを見せてくれた彼に感極まって、抱きつこうとした瞬間にあの子に先を越された。
ぶつかるような勢いで背中から両腕を回して抱きついた彼女、表情は彼の広い胸板に隠されて伺えなかったけど震える肩が如実にその様子を語っていた。

彼は何を言うでもなくただ静かに立ち、好きにさせていた。
まるでそれは父親が愛娘を慈しむかのように。

しばらくしてすずかが落ち着いたのを見計らって彼が口を開く。

「遅くなってすまなかったな、二人とも。
取り乱さずによく頑張った、もう大丈夫だから、後少し我慢してくれ。」

そう言ってからおもむろにポケットから取り出した小型無線イヤホンマイクをジャックから外し、通信ボタンを押してコールする。

「・・・"ブラックナイト"より各員、人質二人の安全は確保した。
各々作戦行動に移ってくれ。」

「"チーフ"、了解♪」
「"メイド1"、了解しました。」
「"メイド2"、りょーかいです。」

「・・・"ニート"了解 って、何であたしがこんな恥ずかしいコールしなきゃいけないのよ!!」

彼が珍しくどもりながらコールした後に聞こえてきた返信は何とも気の抜けるものだった。

「恭也さん、今の声って・・・。
それに"ブラックナイト"って・・・?」

「言ってくれるな、アリサ・・・。
"チー じゃなくて忍が悪乗りしてな、言わなきゃ協力しないって脅してきたんだよ。」

心底くたびれた様子で事情を説明してくれる恭也さん。

「そうだったんですか、忍らしいですね。」

「まあそうでもしなければ不安で押し潰されそうだったんだろうけどな、あいつは。」

でも何だかんだ言って彼女の心情を慮って乗ってあげる優しい人。
そんな彼だから、私も本音を伝える。

「でもピッタリだと思いますよ、恭也さんのコールネーム。
私やすずかにとっては正しく"騎士(ナイト)さま"ですから。」

困惑の表情を浮かべ恥ずかしそうに頬を掻く彼を可愛いと思ってしまった。
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