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58章 本棚4 [リリカルなのはss]

「余計なこと喋ってんじゃねえよ、テメェはよ。」
「スマネ、ボス。」

続いて入って来たのはがっしりした体格に目つきの鋭い角刈りの30前後の腕に入れ墨のある男と、40代くらいの性格のきつそうな眼鏡を掛けた痩せ形の女。

「クライアントと今後の方針が決まった。予定通り計画を進めるから、取りあえず朝まではこのまま待機だ。」
「了解、ってことは約束通り後で喰っていいってことだよな。」
「ああ、声明を公開した後は好きにしていい。そうだよな、クライアントさんよ。」
「ええ、それで構わないわ。」

ボスと呼ばれた男と今回の依頼主と思われる女の肯定を受けて、痩せ男は厭らしい目つきですずかの身体を舐めまわす。

「おら、そんなもの欲しそうにしてねえでテメェ達も見周りに行け。
安物の無線機何ぞ使うからさっきから上手く通信も出来ねえし、B2のモニタールームの内線に誰も出やしない。
見回りついでに覗いて、さぼって居眠りしてたら叩き起こしてこい。」

「了解、了解。おい、ボブ、行くぞ。」

仲間を連れて、部屋を出て行く痩せ男。
部屋に残ったのはボスの男と依頼主の女。

「じゃあ、私は朝まで別の部屋で休ませてもらうわ。
くれぐれも逃がさないようにね、何かあったら起こしてちょうだい。」
「あいよ、お休み。」

続いて出て行く女。
最後に残ったのはボスの男、ダメ元で今回の計画の内容を尋ねる。

意外にもあっさりと教えてくれた、別にクライアントに口止めされているわけでもないとの理由からだったらしい。
それによると彼女は私達の親友でもある八神はやてに個人的な恨みがあるらしく、それを晴らすために今回の事件を起こしたとのことだった。
計画によれば監禁された私達の動画を全管理世界に一般公開した上で、解放して欲しくばはやてが管理局に入局するに至った経緯を包み隠さず公表することを要求し、受け入れられない場合は人質の安全は保証しないとの声明を発表するつもりらしい。

はやて達の事情にそこまで詳しいわけではないが、守護騎士とされるシグナム達の過去の重罪の司法取引で管理局に縛られているということは何となく理解はしている。
加えて管理局がその事実を公にしたくない(いやできないか・・・)のも知っている。

仮に事実を公表したとすれば"犯罪者"とのレッテルを貼られ非難され、要求を受けず私達に被害が及べは"無血漢"として世間からの支持を失う、つまりそれが目的なのだろう。


「それはそうと、嬢ちゃんはどう思う?
さっきからやけに空気が静かなんだが・・・」

唐突にふられた質問にどう答えようか一瞬迷う。
繋がらない無線、連絡の取れない仲間…もしかしたらという淡い希望、もしそうなら少しでも正解から相手の思考を遠ざけるべきだ。

「さぁ、分からないわ。でも、もしかしたら悪霊の仕業かもよ、知らず知らずの内に一人ずつ消されているのかも。」

「ハッ それは傑作だ。確かにあり得ん話じゃないな、何せここは政治犯収容所だった所だ拷問なんぞ日常茶飯事だったし、獄中死も相当の数だからな。」

しばらく呆けた後大笑いしながらゆっくりと移動し、すずかの後ろに立つ。

「おとぎ話の"王子さま"の次は、ホラー小説の"悪霊"か、嬢ちゃんは読書家みたいだな。」
「それは、どうも・・・」

どっちかっていうと、それはすずかの方なんだけどなとおもって男を眺めていると奴は厭らしい笑みを浮かべて続ける。

「だが俺はポルノ小説の方が好きだな。」
「何をするつもり!?」

「なに、後でも先でもやることに変わりはないしな。
それにモニター室の奴らも退屈してるだろうから、生ポルノを見せてやるのさ。」

そう言って、すずかの肩に手を掛ける。

「すずかに触れるんじゃないわよッ!!」

「そう、やっかむな・・・、後で一緒に可愛がってやるからよ。」

私の怒号に怯むでもなく呆れたような笑みを浮かべながら、あの子に顔を近付ける。
男の吐く息があの子の耳元にかかりビクッと震えた瞬間、風が舞った。
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