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2章 外伝 父 [リリカルなのはss 外伝]

「お兄ちゃん、そういえば霊力を扱うようになったきっかけてなんだったの。海鳴で何かあったのは聞いたけど。」

「ふむ、あまり面白い話ではないがそれでもいいか?」

そう前置きした上でお兄ちゃんは話し始める。





なのはが小学四年生になったある春の日 

街に嫌な気配を感じ取って気配の元の廃ビルにいくと、手に龍の刺青をした男達が数名とフードを目深に被った男が一人いた。

《龍》

かつて御神一族を暗殺した組織、美沙斗さんが追っている一族の仇。

そいつらがここにいるという事はまた家族に危害が及ぶ可能性があるということだ、それだけはそれだけはさせまいと決意し『八景』を抜き、制圧すべく柱の影から飛針を投擲する。

男達の錬度は大して高くなかったようで、接近する飛翔物に対して有効な対応ができていなかった。
これで終わりかと思われた瞬間、横合いから全く同じ得物で全て迎撃された。


その段になって襲撃に気付いたのか、男達が懐から拳銃を取り出しあたりを警戒しだす。


背後に突然大きなプレッシャーを感じ横に飛びのく。
今までいた処に一刀の小太刀が振り下ろされていた。

驚く間もなく、その小太刀が突きの形で眼前に迫る。加えて、男達も銃口をこちらに向け引き金に指を掛けていた。

《神速》

状況を打破するため奥義を発動、射線をずらし一番の難敵である剣士の相手をしようとして驚愕する。
神速のモノクロの世界の中、相手も同じように動いていたのだ。



「父さん!!」

神速が解け視界に色が戻る。黒い仕事着を着、小太刀を二刀携えた男は確かに父だった。

返ってきた答えは斬撃、相変わらず重い物だったなんとか受け止めるが、今度は蹴りがきた。たまらず距離を取り、束縛するために鋼糸を飛針と混ぜて投擲するが、飛針は剣で弾かれ、鋼糸は同じく鋼糸で絡め取られる。

何度か打ち合いながら、呼びかけるも父さんに反応はなく後ろからは男達の銃弾が絶え間なく飛んでくる。

「父さん、なんでここにいるんだッ。なんで奴らに協力してるんだよ。」



「ふっはははは・・・無駄だ無駄だ、その男は所詮"死人"だ。術によって死体のまま蘇った人間なのさ。痛みも感じなければ、心臓を貫かれても死ぬこともない、自我を持たない我らに忠実な戦闘人形だ。」

男達のリーダーが吼える。



《御神流奥義の六 薙旋》

《御神流奥義の五 花菱》


奥義を打ち合うが、有効打を与える事ができず左腕に一太刀受ける。


《御神流奥義の壱 虎切》

父さんの得意技が来る。
父さん父さんがいなくなった後、みんなを守る為必死に努力したんだその答えをここで見せるよ。

《御神流奥義の極み 閃 》


「父さん目を覚ましてくれ。」

四肢を切りつけ腱を全て絶つ。


「無駄だといっているだろうに、痛覚などなくなっているそのような攻撃全くの無意・・・・ ドサッ

わめいていた男は途中で眉間に飛針をうけ倒れる。
他の男達も同様の運命をたどっていた。




「って、痛っな~恭也。父親に向って容赦ないな、この馬鹿息子ッ」

「当たり前だ、油断する父さんが悪い。」

「ありゃ、油断してなくても喰らうぞ普通。ほんと、強くなったな恭也。」

「まだまだよ、父さんには敵わない。」

「当ったり前だ。俺に勝とうなんぞ100年早い。」

「そうだな追いつくのはまだまだ先になりそうだよ。それはそうと母さん達には会っていかないのか?」

「馬鹿かお前は、桃子やなのははお前と違って繊細なんだよ。死んだ俺が出て行ったら失神しちまうだろうが。それに術者を殺したんだもう長くはいられない。」

「・・・・・・」

「みんな元気にしてるか?」

「ああ、父さんが亡くなってすぐはみんな酷い状態だったけど今は大丈夫だ。なのはも夢を見つけて羽ばたきだしたよ。父さんのように誰かを守れるようになりたいそうだ。」

「そうか・・・桃子やなのはのことを頼んだぞ、俺の替わりにあいつらを守ってやってくれ、恭也。」

「美由希はいいのか?父さん。」

「う~ん、美由希には美沙斗がついてるから大丈夫だろ。それよりもなのはに悪い虫がつかないように気をつけろよ、あの子は可愛いからな男共が群がってくるだろうから蹴散らせよ。なのはと付き合うには最低限お前を倒す事が条件だ。」

「なのはが選んだ男なら間違いは無いと思うがな。」

「甘い、甘いぞ、恭也。男って奴は、言葉巧みに近付いて毒牙にかけるような生き物なんだ。なのははお前と違って素直な子だから騙されやすいんだ。」

「まあ、素直なのと騙されやすいことには同意するがな。」

「む~心配でおちおち眠れなくなってきたな。」



父さんの体が光りだす、時間が来たようだ。



「こっちの事は心配せずに、ゆっくり休んでいてくれ。しばらくしたら俺も遊びに行くから、それまで待っててくれ父さん。」

「嫌なこった、お前がくると女を一人締めされるからな。当分の間来なくていいぞ、というか来るな。」

「・・・」

「じゃあな、恭也。頑張れよ、自慢の息子よ。」




眩い光と共に消えていき、そこには砂の山だけが残っていた。








「霊力攻撃を受けたわけでもないのに、自力で自我を取り戻したんだからまさしくあの人は化け物だな。」

しみじみと呟くお兄ちゃんに、あなたも同類ですと思ったのは私だけの秘密です。


でもお父さん心配し過ぎです。"いい人"は自分でちゃんと見つけます。それに、お兄ちゃんに勝てる人なんているのかな?いなかったら・・・お兄ちゃんに責任とってもらおうかな。

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