罪滅ぼし [リリカルなのはss 外伝]
先程配信された最重要指名手配犯確保指令の緊急伝達。
まさか彼がという思いと、やはりという思いが交錯し複雑な気分だった。
彼を知る、『特捜課』のあの子達の心中はいかばかりの物か・・・。
私が彼に初めて会ったのは、かれこれ10年以上前、なのはさんがPT事件に巻き込まれた時、彼女の無断外泊の説明に高町家にお邪魔した時。
第一印象はちょっと無愛想な感じのする青年だった。
桃子さんと彼に一通りの説明をした後、桃子さんがお茶のお代わりを淹れに席を立った際。彼は、私にこう言った。
「リンディさん、あなたが何を隠しているのかはあえて問いません。知らないほうがいい事実があることは私も充分わきまえていますし、あなたがそうされたのは母や私、そしてそれを知ることによってなのはに負担がかかると判断されたと思っていますので。」
「どうして、隠し事をしているとお考えですか?」
「私も曲がりなりにも"裏"を知っていますし、私自身が"嘘吐き"ですから。先程のお話、1割が真実、9割が嘘もしくは真実ではない事実といったところじゃないですか。」
「・・・どこまで、ご存知なんですかあなたは?」
「正直、何も。少し前から、なのはが夜中にユーノと出かけて何かをしているのは知っていますがそれが何であるかまでは知りません。」
「にゃにゃ、お兄ちゃん知ってたの?」
「当たり前だ、家の中の気配の移動が分からない様では家族を守ること出来ないからな。」
「理由は問わないんですか?」
「この子にとって、そこまでしてでも成し遂げなければいけない事なんでしょう。
であるなら兄としては信じます、いつか話せる時がきたら話してもらえればそれで構いません。」
「お兄ちゃん・・・」
「なのは、そういうわけで家を空けることは俺は別に反対しない。お前のやりたい事を最後までしっかりやって来い。但し、ちゃんと元気で家に帰って来る事。かーさんや家族を悲しませるような事だけはしないでくれよ。」
「うん。約束する。」
お互いが強い信頼関係で結ばれている兄妹の温かい会話だった。
「では、リンディさん。妹のことをよろしくお願いします。」
二度目に会ったのは、闇の書事件に絡んでなのはさんが守護騎士達に襲撃を受けアースラに回収された時。
事情説明をする傍ら彼の魔力量を測定、結果はほぼ0に近く魔導師としては戦えないというものだった。
その事を知らされた彼は、今後この件になのはさんが関わるかどうかは本人に任せるとし、彼自身は役に立てない以上足手まといにしかならないとして必要以上に関わる気は無い旨を伝えてきた。
その上でベットに横たわる妹をやさしく見やった後で、
「この子の信頼を裏切るような事だけはしないで下さい。」
そう告げる彼の瞳を見た時、私は彼は『己の信念の為なら修羅にもなれる』そんな人だと理解してしまった。
その後、海鳴のマンションに拠点を置いた私達は"ご近所"ということで翠屋にご挨拶に行き、家族単位でのお付き合いをさせてもらうようになった。
この頃から、彼も幾分かフランクな話し方をしてくれるようになった。
最後に彼に会ったのはいつだったか、はっきりと覚えているのは今から9年前なのはさんが帰還途中に襲撃を受けて重態に陥った時。
術後未だ目を覚まさない彼女を傍に、謝罪をする私達に彼は告げた。
『あなた達を責める気はありません。襲撃者を許す気は毛頭ありませんが、あなた達がそれに無関係である以上今回の件に関して責を問うのは筋違いです。あえて責があるとするならば、危険を承知でこの仕事を選んだなのは自身です。』
正直冷たい人だとも思ったし、同時に理性的な判断が出来る大人なのだと私は思っていた。
私は気付けなかった。彼は彼女が傷ついた責任を他の誰でもなく自分自身に求めていた事を。
総務統括官の権限で集めた彼こと『不破恭也』の管理局での遍歴は予想超えた凄まじさだった。
まともな精神の人間であれば何度も自己崩壊を起してしまいそうな事件に多くあたっている。それだけでなく高位魔導師相手の事件においても単独出動しておりどれほど危険を冒していたのかよく分かる。
担当事件の内容を分析すれば、彼の行動の原点にあるものが出会ったあの日からなんら変わっていないのは容易に想像できる。
であるならば、今回のこの事件何か裏がある。
それを暴く事があの心優しい兄妹を巻き込んでしまった私に出来る唯一の罪滅ぼし。
まさか彼がという思いと、やはりという思いが交錯し複雑な気分だった。
彼を知る、『特捜課』のあの子達の心中はいかばかりの物か・・・。
私が彼に初めて会ったのは、かれこれ10年以上前、なのはさんがPT事件に巻き込まれた時、彼女の無断外泊の説明に高町家にお邪魔した時。
第一印象はちょっと無愛想な感じのする青年だった。
桃子さんと彼に一通りの説明をした後、桃子さんがお茶のお代わりを淹れに席を立った際。彼は、私にこう言った。
「リンディさん、あなたが何を隠しているのかはあえて問いません。知らないほうがいい事実があることは私も充分わきまえていますし、あなたがそうされたのは母や私、そしてそれを知ることによってなのはに負担がかかると判断されたと思っていますので。」
「どうして、隠し事をしているとお考えですか?」
「私も曲がりなりにも"裏"を知っていますし、私自身が"嘘吐き"ですから。先程のお話、1割が真実、9割が嘘もしくは真実ではない事実といったところじゃないですか。」
「・・・どこまで、ご存知なんですかあなたは?」
「正直、何も。少し前から、なのはが夜中にユーノと出かけて何かをしているのは知っていますがそれが何であるかまでは知りません。」
「にゃにゃ、お兄ちゃん知ってたの?」
「当たり前だ、家の中の気配の移動が分からない様では家族を守ること出来ないからな。」
「理由は問わないんですか?」
「この子にとって、そこまでしてでも成し遂げなければいけない事なんでしょう。
であるなら兄としては信じます、いつか話せる時がきたら話してもらえればそれで構いません。」
「お兄ちゃん・・・」
「なのは、そういうわけで家を空けることは俺は別に反対しない。お前のやりたい事を最後までしっかりやって来い。但し、ちゃんと元気で家に帰って来る事。かーさんや家族を悲しませるような事だけはしないでくれよ。」
「うん。約束する。」
お互いが強い信頼関係で結ばれている兄妹の温かい会話だった。
「では、リンディさん。妹のことをよろしくお願いします。」
二度目に会ったのは、闇の書事件に絡んでなのはさんが守護騎士達に襲撃を受けアースラに回収された時。
事情説明をする傍ら彼の魔力量を測定、結果はほぼ0に近く魔導師としては戦えないというものだった。
その事を知らされた彼は、今後この件になのはさんが関わるかどうかは本人に任せるとし、彼自身は役に立てない以上足手まといにしかならないとして必要以上に関わる気は無い旨を伝えてきた。
その上でベットに横たわる妹をやさしく見やった後で、
「この子の信頼を裏切るような事だけはしないで下さい。」
そう告げる彼の瞳を見た時、私は彼は『己の信念の為なら修羅にもなれる』そんな人だと理解してしまった。
その後、海鳴のマンションに拠点を置いた私達は"ご近所"ということで翠屋にご挨拶に行き、家族単位でのお付き合いをさせてもらうようになった。
この頃から、彼も幾分かフランクな話し方をしてくれるようになった。
最後に彼に会ったのはいつだったか、はっきりと覚えているのは今から9年前なのはさんが帰還途中に襲撃を受けて重態に陥った時。
術後未だ目を覚まさない彼女を傍に、謝罪をする私達に彼は告げた。
『あなた達を責める気はありません。襲撃者を許す気は毛頭ありませんが、あなた達がそれに無関係である以上今回の件に関して責を問うのは筋違いです。あえて責があるとするならば、危険を承知でこの仕事を選んだなのは自身です。』
正直冷たい人だとも思ったし、同時に理性的な判断が出来る大人なのだと私は思っていた。
私は気付けなかった。彼は彼女が傷ついた責任を他の誰でもなく自分自身に求めていた事を。
総務統括官の権限で集めた彼こと『不破恭也』の管理局での遍歴は予想超えた凄まじさだった。
まともな精神の人間であれば何度も自己崩壊を起してしまいそうな事件に多くあたっている。それだけでなく高位魔導師相手の事件においても単独出動しておりどれほど危険を冒していたのかよく分かる。
担当事件の内容を分析すれば、彼の行動の原点にあるものが出会ったあの日からなんら変わっていないのは容易に想像できる。
であるならば、今回のこの事件何か裏がある。
それを暴く事があの心優しい兄妹を巻き込んでしまった私に出来る唯一の罪滅ぼし。
2009-07-08 10:15