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弱音 [リリカルなのはss 外伝]

襲撃の傷が癒えて、私はリハビリを続けている。
リハビリを開始してから2ヶ月、立つことすらまだ出来ていなかった。

今日のリハビリ訓練は全て終了し、今は個室のベットで今日もお見舞いに来てくれたお兄ちゃんと話していた。


「私の為にみんなが頑張ってくれてるのに、こんなことぐらいで弱音なんか吐いてられないよ。」
無理矢理笑顔を作る。

「お前は本当に優しい子だな、弱音を吐くと周りが余計心配すると思ってるのか。」

ギュッと掛けシーツを両手で掴み、俯く。
お兄ちゃんはふぅとため息を吐いて頭に置いた手を外し、頬に添えてわたしの目を見つめ優しく語りかける。


「家族・・・兄には我慢しなくていい。弱音を吐いてくれて、頼ってくれていい、むしろ気を遣われる方が辛い。」

「・・・・・・」

「それともなにか、兄は頼るに値しないか?・・・まあ、確かに守ってやることは出来なかったが。」

「む~お兄ちゃんのいじわる。」

「そうだぞ、兄は意地悪だから好きな子は苛めたくなるんだ。」



そんなこと言われたらもう我慢できないよ。
今まで耐えていた悔しさが、辛さが溢れてくる。

「こんなに頑張ってるのに、こんなに痛みに耐えてるのに全然思い通りにいかなくて、辛くて。
みんなに心配ばかりかけて無理させて、そんな自分の不甲斐なさが情けなくて悔しくて、こんなはずじゃなかったのに・・・。」

「そうか、そうか辛かったな、なのは。ありきたりだがな、なのは・・・焦らなくていい。誰もお前を置いていったりはしない、兄はいつまでもお前を待っている。お前のペースでゆっくりと進めばいい、今は休む時だ。」

お兄ちゃんに頭を撫でられながら、涙を流す。シーツの上に涙の染みが広がっていた。








「お待たせしました、シャマル先生。なのはも落ち着きましたから、どうぞ。」

突然室内から声を掛けられてびっくりする。

「あの、いつから気が付かれてました?」

「シャマル先生がいらっしゃった時ですよ、すみませんお気を遣わせてしまって。ずいぶんお待たせしてしまいました。」

「ちょうど今、泣き疲れて眠ったところです。検査等でなければ、少し眠らせてやって貰えますか。」

「ええ、大丈夫です。ちょっと様子を見に来ただけですから。
なのはちゃん、いつもメニュー以上のリハビリをしようとするから心配だったんです。
焦ってたんですね、彼女。そんな気持ち、全然気が付いてあげれなかった。」

「仕方がありませんよ、この子は昔から自分の気持ちを隠すのがうまいですから。俺達が"そう"させてしまいましたから。」

「どういうことなんですか、それは。」

「この子が生まれる少し前に父親は仕事で亡くなりました。この子が生まれた後も、母親はOPENしたばかりの店の切盛りで余裕がなく、俺も美由希も学校や修行であまり構ってやれなかったんです。
一番家族の愛情が欲しい時期に誰もついていてやることが出来なかった。そんな中でも、あの子は我侭を言うでもなくじっと家で待っていました。子供心に心配を掛けたくないと思ったんでしょう、それからというのも辛いとか悲しいといった感情を外に出さずに内に溜め込むようになってしまったんです。
管理局の皆さんは、なのはの事をしっかりした大人として扱ってくれますが、俺達家族にとっては"甘え方を知らない"普通のかわいい女の子なんです。」

「ええ、それははやてちゃんにもフェイトちゃんにも言える事かもしれませんね。」

「なのはにしても、あの子達にしても内に溜め込んだ感情はいつか心を壊します。
だから、泣ける時には泣いて欲しい。兄としてあの子達の友として、泣く場所を、時間を作ってやることぐらいは出来ると思うから。」

「ええ、なのはちゃんは私の大切なお友達ですから。私も家族として友達として精一杯あの子達を支えていきます。」



ベットに年相応の可愛らしい寝顔で眠る小さな魔導師を見て思う。
なのはちゃんは大丈夫。こんなにも思ってくれるお兄さんがいるんだから、きっともっと強くなれる。
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