出来損ない [リリカルなのはss 外伝]
あたしは、兄の部隊葬に参列している。
今は、関係者による弔辞が述べられている。
あたしの兄『ティーダ・ランスター』は時空管理局 首都航空隊に所属する魔導師だった。
4日前、逃走違法魔導師追跡任務中に容疑者からの攻撃を受けて殉職した。
「・・・容疑者を取り逃がした上に殺されるなど、私の部隊に泥を塗りおって、とんだ"役立たず"の男だ。」
あたしの横で、航空隊の大隊長が兄を罵る。
悔しくて、拳を握り締め唇を引き結ぶ。
周りの兄の同僚達もいい感じはしないようだが、相手が"偉い人"である為表立って不快感を表することはできないようだった。
「閣下、故人を侮辱しないで頂きたい。」
突然、後ろの方から声が上がった。
「何だ、貴様は。」
「私は・・・『XXXX』です。」
黒いスーツを来た、兄より少し年上くらいの男の人だった。
「ふん。ランク"F"の"出来損ない"が何の用だ。」
「ランスター一等空尉は、立派に職務を全うされました。そのことを同じ局に所属する者として誇りに思っております。」
「"出来損ない"同士気が合うものだな。」
「"出来損ない"にも"出来損ない"なりの誇りがあります。閣下のおっしゃりようでは、今後の部隊士気に関わると愚考いたしますが。」
「ふん、そんなことは貴様に言われるまでもないわ。」
そう吐き捨てて来賓の席に戻る。
埋葬が終わり、部隊葬は完了した。
皆が解散していく中、あたしはさっきの男の人を探していた。
あの人は周りが相手の地位を恐れて萎縮してしまっている中、自分が貶められるのを承知で『兄』と『あたし』の誇りを守ってくれた。
「あの、すみません。」
「はい、どうしました。お嬢さん。」
「あ、あの あたし、ティーダ・ランスターの妹でティアナ・ランスターといいます。先程はありがとうございました。」
「いえ、構いませんよ。自分が感じたことを言ったまでですから。」
やさしく、微笑んでくれた。
兄さんと違って、少しきつい感じのする男の人だったけどその笑顔は兄さんと同じで温かかった。
「君は、泣かないのかい?」
しばらくして、その人はおもむろに尋ねてきた。
なぜか、心のうちを見透かされているような気がした。
「・・・・・・、いまあたしが泣いてしまったら、兄さんのしたことを否定したことになるような気がするんです。さっきの人が言っていたことを認めてしまうような気がして・・・」
男の人は、ゆっくり頭を振って言う。
「そんなことはない。悲しい時は泣いていいんだ。悲しい時、無理に"泣かない"と人は壊れてしまう。だから、お兄さんの為にも、そして何よりも君自身の為に無理せず泣いて欲しい。」
湧いてくる涙をこらえることができなかった。
立派だった兄の意志を継ごうと、強くなって兄をバカにした周りを見返してやろう、泣いてる暇はないと、ずっとこらえてた。
でもどこかで思っていた
「"役立たず"でもいい、"立派"じゃなくてもいい、罵られたって構わない。どんなにみっともなくてもいいから、生きていて欲しかった、生きて傍にいて欲しかったんです。」
彼は咽び泣くあたしをやさしく抱きしめ背中をさすってくれる。
そう、かつて兄がしてくれたように。
「・・・すみません。服、濡らしちゃって。」
「ああ、別に構わないよ。もう、大丈夫かな?」
「ええ、まだ直ぐには立ち直れないかも知れないですけど、いつかきっと兄の夢をあたしが叶えます。」
「そうか、君は強い、きっとできるよ。ただ、無理だけはしないようにな。お兄さんも、きっと悲しむから。」
「はい。」
あたしが6課に配属される6年前の出来事だった。
今は、関係者による弔辞が述べられている。
あたしの兄『ティーダ・ランスター』は時空管理局 首都航空隊に所属する魔導師だった。
4日前、逃走違法魔導師追跡任務中に容疑者からの攻撃を受けて殉職した。
「・・・容疑者を取り逃がした上に殺されるなど、私の部隊に泥を塗りおって、とんだ"役立たず"の男だ。」
あたしの横で、航空隊の大隊長が兄を罵る。
悔しくて、拳を握り締め唇を引き結ぶ。
周りの兄の同僚達もいい感じはしないようだが、相手が"偉い人"である為表立って不快感を表することはできないようだった。
「閣下、故人を侮辱しないで頂きたい。」
突然、後ろの方から声が上がった。
「何だ、貴様は。」
「私は・・・『XXXX』です。」
黒いスーツを来た、兄より少し年上くらいの男の人だった。
「ふん。ランク"F"の"出来損ない"が何の用だ。」
「ランスター一等空尉は、立派に職務を全うされました。そのことを同じ局に所属する者として誇りに思っております。」
「"出来損ない"同士気が合うものだな。」
「"出来損ない"にも"出来損ない"なりの誇りがあります。閣下のおっしゃりようでは、今後の部隊士気に関わると愚考いたしますが。」
「ふん、そんなことは貴様に言われるまでもないわ。」
そう吐き捨てて来賓の席に戻る。
埋葬が終わり、部隊葬は完了した。
皆が解散していく中、あたしはさっきの男の人を探していた。
あの人は周りが相手の地位を恐れて萎縮してしまっている中、自分が貶められるのを承知で『兄』と『あたし』の誇りを守ってくれた。
「あの、すみません。」
「はい、どうしました。お嬢さん。」
「あ、あの あたし、ティーダ・ランスターの妹でティアナ・ランスターといいます。先程はありがとうございました。」
「いえ、構いませんよ。自分が感じたことを言ったまでですから。」
やさしく、微笑んでくれた。
兄さんと違って、少しきつい感じのする男の人だったけどその笑顔は兄さんと同じで温かかった。
「君は、泣かないのかい?」
しばらくして、その人はおもむろに尋ねてきた。
なぜか、心のうちを見透かされているような気がした。
「・・・・・・、いまあたしが泣いてしまったら、兄さんのしたことを否定したことになるような気がするんです。さっきの人が言っていたことを認めてしまうような気がして・・・」
男の人は、ゆっくり頭を振って言う。
「そんなことはない。悲しい時は泣いていいんだ。悲しい時、無理に"泣かない"と人は壊れてしまう。だから、お兄さんの為にも、そして何よりも君自身の為に無理せず泣いて欲しい。」
湧いてくる涙をこらえることができなかった。
立派だった兄の意志を継ごうと、強くなって兄をバカにした周りを見返してやろう、泣いてる暇はないと、ずっとこらえてた。
でもどこかで思っていた
「"役立たず"でもいい、"立派"じゃなくてもいい、罵られたって構わない。どんなにみっともなくてもいいから、生きていて欲しかった、生きて傍にいて欲しかったんです。」
彼は咽び泣くあたしをやさしく抱きしめ背中をさすってくれる。
そう、かつて兄がしてくれたように。
「・・・すみません。服、濡らしちゃって。」
「ああ、別に構わないよ。もう、大丈夫かな?」
「ええ、まだ直ぐには立ち直れないかも知れないですけど、いつかきっと兄の夢をあたしが叶えます。」
「そうか、君は強い、きっとできるよ。ただ、無理だけはしないようにな。お兄さんも、きっと悲しむから。」
「はい。」
あたしが6課に配属される6年前の出来事だった。
2009-07-08 09:54