生きる意志1 [リリカルなのはss 外伝]
JS事件終結後、約一年がたとうとする頃。
再び管理局を震撼させる事件が起きる。
いくつかの軌道拘置所が襲撃され、収監されていた囚人が開放されたのである。
そこに収監されていた人物は
JS事件首謀者
『ジェイル・スカリエッティ』
その配下たる、戦闘機人の二人
『ウーノ』
『クアットロ』
管理局上層部はこの事実を公表することなく、ある一人の人物に処理を命じる。
『逃亡した三名を発見し、確保せよ。』
その指令書には、注釈が付いていた。
《DEAD OR ALIVE (生死は問わず)》
アンダーグランドにもぐった彼らの行方はようとして知れず、事件解決は難航するかと思われた。
だが、逃亡者の一人の行動から事態は急転する。
第97管理外世界 ここで、一人の女性が拉致された。
女性の名は
『アリサ・バニングス』
今年二十歳を迎える、魔法世界とは関わりのない民間人である。
そして、JS事件解決の功労者『高町なのは』、『フェイト・T・ハラオウン』、『八神はやて』の幼少時代からの親友でもある。
目を覚ますと、そこは見知らぬ廃ビルの一室だった。
大学での講義を終え、帰宅途中何もなかったはずの空間から出てきた手に口元を押さえられた所までは覚えている。どうやら、睡眠薬を嗅がされたらしく気を失ってしまったようだ。
今は、足首と両手をそれぞれロープで縛られ床に転がされている状態だった。
時間は夜なのか、外から遠くの街明かりが差し込むだけでそこに光はほとんどない。
その状況は、昔の恐怖を思い出させるには十分だった。
小学生の頃、資産家の娘だった自分は下校途中に誘拐に遭い廃ビルに連れ込まれ、危うく乱暴されそうになったことがあったのだ。
あの忌まわしい記憶は、今尚消え去っておらず現在進行形で心を蝕む。
「あら、気が付いた?子羊さん。」
突然、闇から響いた声にビクリとしながら半身を起こし、声のした方向に顔を向ける。
そこには、私より少し若いくらいの眼鏡をかけた女の子が薄ら笑いを浮かべて立っていた。
「あなた、何者?」
「私、私は偉大なるお父様『ジェイル・スカリエッティ』の四番目の娘、そして『高町なのは』に復讐する者よ。」
「・・・なのはに『復讐』ですって・・・?」
「ええ、そうよ。あの女さえでしゃばらなければ、お父様の崇高な計画は達成されていたはずだし、私もこんな惨めな思いもしなくて済んだのよッ」
憎憎しげに呪詛の言葉を吐く。
「そのために、私を連れてきたの?」
「そう、だからあの馬鹿女に復讐するの。とりあえずあなたの一部を切り取って、送りつけてあげるわ。もちろん、記録映像も付けてね。そして、最期まで何もできないことを嘆くといいわ。」
冗談じゃない、詳しくは知らないけどなのはに対する逆恨みでこの女は私を『殺す』と言っている。
こんな時、本当なら相手を刺激せず逆転の機会を待つべきなんだろうけど・・・性格上できなかったし、親友を馬鹿にされて黙っているほどお人よしでもない。
「ふざけるんじゃないわよ!!
『なのはに邪魔された』 そんなの只の言いがかりじゃない、自分達で悪さしてそれを阻止したあの子を責めるなんてお門違いもいいところよッ。よっぽど、アンタのほうが馬鹿じゃないの。」
ああ、言ってしまった・・・
目の前の高ビー女は馬鹿にされることに慣れていないのかプルプル震えている。
グッ
いきなり、髪を掴まれた。
「いいわ、そんなに死にたいんだったら今から殺してあげる。」
女は右手でナイフを取り出し、刺し殺すべく後ろに腕を引く。
《あ~あ、短い人生だったな~。ファーストキスすらまだしてないのに・・・。》
覚悟を決めて、まぶたを閉じる。
《なのは、アンタは間違ったことしてないんだから、がんばんなさいよ・・・でも最期にあの人に会いたかったな・・・》
ザンッ、ガキン
何かがぶつかる音がして、頬に風が当たる。不意に私の髪を掴んでいた、女の手が離れる。
なかなか来ない衝撃をいぶかしんで、恐る恐る目を開ける。
そこには、あの時と同じ様に黒い大きな背中があった。
「恭也さんっ!!」
彼は私と女の間に入って、抜刀した二本の小太刀を油断なく構える。
突然の乱入者に驚いた女は、その場を飛び退り恭也さんとの距離を取る。
彼女の左腕は手首から先がなくなり、断面からはコードが飛び出しスパークしていた。
「遅くなってすまない。怪我はないか?」
後ろをちらりと見ながら、聞いてくる。
その質問にコクリと頷いて答えると、視線を前に戻し。
「すぐ済ませる。怖かったら、目を閉じていてくれ。」
力強く言ってくれる。
「たいした自信ね。これを見てからでも、その自信を保てるかしら?」
その言葉と同時に、女の姿が消えた。
再び管理局を震撼させる事件が起きる。
いくつかの軌道拘置所が襲撃され、収監されていた囚人が開放されたのである。
そこに収監されていた人物は
JS事件首謀者
『ジェイル・スカリエッティ』
その配下たる、戦闘機人の二人
『ウーノ』
『クアットロ』
管理局上層部はこの事実を公表することなく、ある一人の人物に処理を命じる。
『逃亡した三名を発見し、確保せよ。』
その指令書には、注釈が付いていた。
《DEAD OR ALIVE (生死は問わず)》
アンダーグランドにもぐった彼らの行方はようとして知れず、事件解決は難航するかと思われた。
だが、逃亡者の一人の行動から事態は急転する。
第97管理外世界 ここで、一人の女性が拉致された。
女性の名は
『アリサ・バニングス』
今年二十歳を迎える、魔法世界とは関わりのない民間人である。
そして、JS事件解決の功労者『高町なのは』、『フェイト・T・ハラオウン』、『八神はやて』の幼少時代からの親友でもある。
目を覚ますと、そこは見知らぬ廃ビルの一室だった。
大学での講義を終え、帰宅途中何もなかったはずの空間から出てきた手に口元を押さえられた所までは覚えている。どうやら、睡眠薬を嗅がされたらしく気を失ってしまったようだ。
今は、足首と両手をそれぞれロープで縛られ床に転がされている状態だった。
時間は夜なのか、外から遠くの街明かりが差し込むだけでそこに光はほとんどない。
その状況は、昔の恐怖を思い出させるには十分だった。
小学生の頃、資産家の娘だった自分は下校途中に誘拐に遭い廃ビルに連れ込まれ、危うく乱暴されそうになったことがあったのだ。
あの忌まわしい記憶は、今尚消え去っておらず現在進行形で心を蝕む。
「あら、気が付いた?子羊さん。」
突然、闇から響いた声にビクリとしながら半身を起こし、声のした方向に顔を向ける。
そこには、私より少し若いくらいの眼鏡をかけた女の子が薄ら笑いを浮かべて立っていた。
「あなた、何者?」
「私、私は偉大なるお父様『ジェイル・スカリエッティ』の四番目の娘、そして『高町なのは』に復讐する者よ。」
「・・・なのはに『復讐』ですって・・・?」
「ええ、そうよ。あの女さえでしゃばらなければ、お父様の崇高な計画は達成されていたはずだし、私もこんな惨めな思いもしなくて済んだのよッ」
憎憎しげに呪詛の言葉を吐く。
「そのために、私を連れてきたの?」
「そう、だからあの馬鹿女に復讐するの。とりあえずあなたの一部を切り取って、送りつけてあげるわ。もちろん、記録映像も付けてね。そして、最期まで何もできないことを嘆くといいわ。」
冗談じゃない、詳しくは知らないけどなのはに対する逆恨みでこの女は私を『殺す』と言っている。
こんな時、本当なら相手を刺激せず逆転の機会を待つべきなんだろうけど・・・性格上できなかったし、親友を馬鹿にされて黙っているほどお人よしでもない。
「ふざけるんじゃないわよ!!
『なのはに邪魔された』 そんなの只の言いがかりじゃない、自分達で悪さしてそれを阻止したあの子を責めるなんてお門違いもいいところよッ。よっぽど、アンタのほうが馬鹿じゃないの。」
ああ、言ってしまった・・・
目の前の高ビー女は馬鹿にされることに慣れていないのかプルプル震えている。
グッ
いきなり、髪を掴まれた。
「いいわ、そんなに死にたいんだったら今から殺してあげる。」
女は右手でナイフを取り出し、刺し殺すべく後ろに腕を引く。
《あ~あ、短い人生だったな~。ファーストキスすらまだしてないのに・・・。》
覚悟を決めて、まぶたを閉じる。
《なのは、アンタは間違ったことしてないんだから、がんばんなさいよ・・・でも最期にあの人に会いたかったな・・・》
ザンッ、ガキン
何かがぶつかる音がして、頬に風が当たる。不意に私の髪を掴んでいた、女の手が離れる。
なかなか来ない衝撃をいぶかしんで、恐る恐る目を開ける。
そこには、あの時と同じ様に黒い大きな背中があった。
「恭也さんっ!!」
彼は私と女の間に入って、抜刀した二本の小太刀を油断なく構える。
突然の乱入者に驚いた女は、その場を飛び退り恭也さんとの距離を取る。
彼女の左腕は手首から先がなくなり、断面からはコードが飛び出しスパークしていた。
「遅くなってすまない。怪我はないか?」
後ろをちらりと見ながら、聞いてくる。
その質問にコクリと頷いて答えると、視線を前に戻し。
「すぐ済ませる。怖かったら、目を閉じていてくれ。」
力強く言ってくれる。
「たいした自信ね。これを見てからでも、その自信を保てるかしら?」
その言葉と同時に、女の姿が消えた。
2009-07-03 17:30