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完全外伝 伝説の闘い [リリカルなのはss 外伝]

聖祥大付属小学校での最後の運動会。
澄み渡るような青空、絶好の運動会日和。

土曜日とあって児童達の各家庭から応援が来ている。
これから午後の6年生の父兄参加プログラムが開催される。

競技内容は変則騎馬戦だった。
ルールは父兄が馬役となり児童を肩車する。
頭の鉢巻を取られたら負け、鉢巻一つにつき一ポイント。
倒した相手がその時点で獲得している、鉢巻もポイントに加算される。
制限時間20分終了段階でポイント数が一番多いペアの勝利。

ちなみに優勝賞品は隣町に先月オープンした遊園地のペア入場券だった。

今回の勝負なかなかに戦略が必要だった。
がむしゃらに勝負にいっても最後に鉢巻を取られれば負けるし、逆に逃げ回って最後にポイントの多い騎馬を狙うにしても相手にしてもらえなければ結局は負けである。
いかに効率よく狩りをするか、それが勝負の分かれ目になりそうだ。

競技参加の騎馬を見やる。

フェイトちゃんはクロノ君と。
はやてちゃんはシグナムさんと。
すずかちゃんはノエルさんと。
アリサちゃんはお父さんのデビットさんと。

それぞれ参戦するようだ。
かくいう私の馬役は真っ黒なジャージ姿のお兄ちゃんだった。

「絶対勝とうね、お兄ちゃん。」
「ああ、御神の剣士に負けは無い任しておけ。」



-競技開始10分後-

やはりというかなんというか、予想通りのメンバーが残っていた。
先程のクラスメイト4組だ。もちろん他にも数組残っているが敵ではないだろう。

「なのはちゃん、この勝負勝たせてもらうよ。勝って、恭也さんとデートに行くの。」
「恭也様、手加減は致しません。」

すずかちゃん、ノエルさんペアが勝負を挑んできた。
このペア、騎手も騎馬も異様に運動能力が高くかなりの強敵だ。

でも私だって、管理局で伊達に訓練を積んできたわけではない。
お兄ちゃんとのデートは親友といえども譲れない。

「「いざ尋常に勝負!!」」

ハッ 

フッ

すずかちゃんの鋭い差し手が来るが、お兄ちゃんの体捌きでかわしながら相手の隙を窺う。
その時後方から迫る影があった。

「なのはっ覚悟~!!」

バニングス親子が膠着状態に陥っている、私達の後方から奇襲を掛けてきた。


前からはすずかちゃん、後ろからはアリサちゃん まさしく前門の虎 後門の狼

絶体絶命。

でも私達は負けない、

「なのはっ、フォーメーションD」

その瞬間、私はお兄ちゃんと一心同体になる。

お兄ちゃんの掛け声と共にその場でお兄ちゃんが屈み私も前屈みになって、一気に低くなる。
そうする事によって、肩車されているすずかちゃん、アリサちゃんともに私の鉢巻まで手が届かなくなる。

そのまま横にスライドし、90度角度を変えたところで立ち上がる。
目の前には突然の事に体勢を崩した二人の騎手、難なく両手で鉢巻を奪う。



会場がどよめく



私達に向けられる賞賛の眼差しが心地よい。



すずかちゃん、アリサちゃんのポイントも奪えたので逃げに入ってもよかったが勝利をより確実にする為攻めに出る。

次の得物はフェィトちゃんクロノ君ペア。



「ごめんね、フェィトちゃん。勝負の世界は無情なの。」

「うう~ひどいよ、なのは。」

「くぅ~僕だって、少しは成長してるのに~」


騎馬の身長差であっさり勝負がついてしまった。



-競技時間残り3分-

このまま行けば優勝確実な私達に、逆転狙いのペアが襲い掛かって来るが人馬一体となったお兄ちゃんと私の敵ではなかった。

「なのはちゃん、悪いけど最後に勝つのはわたしらや。」
「主はやてに勝利をもたらすのが私の使命、いざ覚悟。」

最後に強敵が待っていた。
だが今の私達に倒せない敵はない。


「勝つぞ、なのは。」

「うん。」

「フォーメションS発動。」





「恭ちゃん、『神速』使うなんて大人気ないよ。」

かくして、伝説の闘いは幕を閉じたのです。

完全外伝 最後の文化祭 [リリカルなのはss 外伝]

中学最後の文化祭 来年卒業したら私達はミッドチルダに拠点を移す予定、だから海鳴でアリサやすずかと一緒に学園生活で楽しむイベントはこれが最後になる。今年はクラスの出し物が分かれていて私、なのは、はやてが体育館で演劇、アリサとすずかは教室で喫茶店だった。

ちなみ私達の演目は『眠れる森の美女』 配役は、パーティーに呼ばれなかった黒の魔法使いがはやて、パーティーに遅刻してきた白の魔法使いがなのは、そしてヒロインのお姫様役が私だった。
配役は私達が局の仕事で早退した時に、投票で決まったそうだ。

今回の演劇の一つの目玉として観客参加というのがあった。というのも、私達が通う私立聖祥大附属中学校は女子校なのでお姫様を助けに来る騎士役をやる男子がいない、そこで招待客から選ぼうという話しになったのだ。

正直、私は不安でたまらない。というのも劇のラストシーンで、騎士が黒の魔法使いを白の魔法使いと協力して倒した後、未だに眠る眠り姫に口付けをして起すというシナリオになっていたからだ。
もちろん、本当にキスをするわけではないが知らない男の人に間近に顔をよせられるのは正直嬉しいものではなかったから。

上演開始10分前、クラスの舞台監督の子が観客席に集まった招待客を見渡し誰かを指名したようだ。
それがどんな人なのかは私達には教えてくれないらしい、舞台で会ってからのお楽しみだそうだ。ただ、『期待していいわよ』と囁かれた。何を期待しろというのだろうか。

幕が上がりつつがなく舞台は進行していく。
いよいよラストシーン。

『おお、なんと美しい姫君・・・』

(えっ?)

舞台袖から聞こえてきた騎士役の男性(ひと)の声、もしかして恭也さん。
そういえば、なのはが招待状渡したって言ってたっけ。

彼がセットのベットに近付いてくるのが目を瞑っていても分かった、台詞だと分かっていてもなんだか照れてしまう。


ガシャッ

《《フェイトちゃん、危ない!!》》

頭上で何かが外れる音がして、なのはとはやてから念話で警告が入る。
何事かと思い、瞼を開くとそこには騎士の舞台衣装を身につけた恭也さんがいた。彼の肩越しに天井からベットに落下するスポットライトが見えた。


ドォォン

観客席がざわめく。

「お怪我はありませんか、姫。」

顔の上から恭也さんの声が聞こえる。
そこで初めて、自分の今の状態を理解した。

背中、肩と膝裏に腕と手を当てられ抱えられている。所謂『お姫様抱っこ』というものだった。

「(////)・・・はい。」

「それはよかった。白の魔女よ、姫を頼む。俺は、卑劣な罠を仕掛けた黒の魔女を倒す。」

スポットライトが落ちた時、私を助けようとして舞台に飛び出てきていたなのはとはやてに恭也さんは芝居を続けさせる。最後の口付けによる、目覚めのシーンはカットになったがそれでも何とか綺麗にまとまった。

劇中のアクシデントも恭也さんの機転のお蔭で、演出ということで何とかごまかせた。

上演終了後改めてお礼を言う私に、『フェィトに怪我が無くて何よりだった、ドレス姿も似合ってたぞ。』と声を掛けてくれた。

ちなみに演劇の様子は恭也さん、忍さんと一緒に来ていたノエルさんがビデオに撮ってくれていて後日関係者に回された。

結果

「くぅ~羨ましい。」

「いいな、フェイトちゃん。」

アリサとすずかに嫉妬され、

「「あらあらあら・・・・」」

リンディ母さんと桃子さんにからかわれることになった。










-教室-
私達三人は教室に来ていた。
というのも、舞台終了後恭也さん達にこの後の予定を聞いたらアリサ達のところに寄ってその後、自由時間になる彼女達と模擬店を回る予定だとのことだったのでご一緒させてもらう事にしたのだ。

もっとも私達はまだ若干片付けがあったので恭也さんたちに先に行ってもらっていたのだが。
教室に入るとクラスの女の子達が制服の上にお揃いのエプロンをつけてウェイトレスをしていた。その中に、忍さんノエルさんと話す親友二人を見つける。

「あれ、お兄ちゃんは?」

「う、うん ちょっと今席外してるの。」
「あはは、恭也さんちょっと"お話し"しに行ってる。」

なのはの質問にすずかとアリサが答えにくそうに返す。
忍さんが苦笑いしながら教えてくれたところによると、すずかにちょっかいをかけていた若いナンパ男二人を恭也さんが注意したところ、相手からお話しがしたいと誘われて外に出て行ったそうだ。




「みんな、お待たせ。」

恭也さんだけが帰って来た。特になんとも無いみたいなので少しホッとした。


「恭也、右の頬に赤いのついてるわよ。」

「むっ、証拠が残るようなところはやってないはずなんだが・・・」

クスクスクス

忍さんがしのび笑いをする。

「く、こんな簡単な誘導尋問に引っかかるとはまだまだ未熟。」



「「「「恭也さん・・・やっちゃたんですねッ」」」」



「む、平和的な解決を提案したんだがな応じてもらえなかったので少し頭を冷やしてもらったんだが・・・」

「お兄ちゃん、暴力はダメです。」

「・・・すまない。」


「なのはちゃん、恭也さんを責めないで。私の為にやってくれたんだから。」

すずかがチラッと恭也さんを見ながら顔を赤らめなのはを宥める。

「そうやで、なのはちゃんかてそう人のこと言えんやろ。絡んできた相手に問答無用で砲撃魔法撃ちこんどるやんか。」

「ちょ、ちょっとはやてちゃん、ばらさないでよ。みんなもそんな目で見ないで~」

なのはが、周りからジト目で見られてわたわたしている。



色々アクシデントもあったけど、思い出に残る楽しい文化祭だったな。

旦那との出会い [リリカルなのはss 外伝]

その事件は首都郊外にある街で起こった。
最初は何の変哲もない強盗事件だった、それが通報を受けて駆けつけた管理局地上部隊の縄張り争いの結果逃亡を許し最終的に幼稚園に人質を取って立てこもられる事態になってしまっていた。

犯人グループは全部で5名、全て魔導師ではあったが飛行能力はなかった。
状況としては1階の表口と裏口に一人ずつ、2階に逃げ遅れ人質として捕らえられた子供達4名と犯人三人。
2階ではリーダー格の男が一人の女の子に魔力ナイフを突き付け窓からカーテンの隙間越しに外の様子を窺っており、残り二人は三人の子供達にそれぞれのデバイスを向け見張っていた。

周りに高い建物がなく、狙撃による排除は困難であり制圧には直接踏み込むしかなさそうだった。
ただここで問題になったのが、犯人が強盗事件の際にも脅しで使用した無線起爆式の爆弾だった。この爆弾が人質の一人の子の体にテープで巻きつけられその子を囲むようにして残りの二人の子が座らされているのである。この爆弾の威力は半径1メートルの物を吹き飛ばすだけの威力はあり使用されれば、間違いなく人質が死亡することは明白だった。しかも、起爆スイッチを5人の犯人の内誰が持っているのか分からないため下手をうてないのである。

ここまで内部の状況が詳しく分かったのは実はこの幼稚園、前まで宝飾店だったらしく防犯カメラが設置されたままだったのだ。通常警備会社に信号を送っている回線を臨時作戦本部の指揮車に回し映像を解析する。

映像解析の結果もう一つ分かった事が、爆弾に付いている無線受信機は爆弾に伸びているリード線を切れば無効化できるというものだった。

犯人グループからの要求は、逃走車両の用意。追跡を中止すること。転送ゲートの使用だった。

事件の難易度から、本局の戦技教導隊に出動依頼が掛かるのは時間の問題かと思われていた。





そんな中俺は上官に呼ばれ一人の黒尽くめの男を現場までヘリで運ぶ事になった。



「嘱託魔導師 不破恭也 レティ提督の命により、作戦応援に参りました。指示をお願い致します。」

「ふん、本局の狗が何の用だ。おとなしくそこで見ておればいいわ。」

全体指揮を執る部隊長の一尉がうっとうしげに答える。
しかし、じれた犯人側が要求を硬化させたことによって状況は変わる。10分以内に要求が受け入れられなければ人質を一人殺すと宣言してきたのだ。





「不破陸士、君に2階の制圧を任せる。」

嘱託魔導師は部隊作戦参加時は陸士もしくは空戦魔導師として臨時で部隊に組み込まれる。

「了解しました、では1階の制圧をお願い致します。」


この狸親父め、一尉は一番制圧が難しい2階を不破陸士にさせる事によって失敗した時の責任を回避するつもりが見え見えだった。


こうして、2階は不破陸士が制圧、タイミングを合わせて表口からA班 裏口からB班 それぞれ5名の陸士が突入する事になった。

排気ダクトから2階の天井裏に侵入した彼から通信が入る。

「こちら不破配置につきました、カウントスタート10秒後に行動を開始します。タイミング合わせお願いします。」

「A班了解」「B班了解」

「カウント スタート」

・・5 ・ ・2 1   ≪≪≪ドンッ≫≫≫

三箇所から突入が始まる。

一番の難関 2階の制圧

天井を破って下に落下しながら、左手で投擲された物体が人質にデバイスを突きつけていた一人の男の眉間に当たり昏倒させる。爆弾を巻き付けられた人質の真横に着地、右手の小刀で素早く受信機のリード線と爆弾を止めていたテープを切る。外れた爆弾を部屋の隅に投げ飛ばし、回し蹴りで自身の後ろにいたもう一人の男の側頭部に衝撃を与え脳震盪を起させる。

後ろの騒ぎに気付いた、窓際で少女を人質に取っていたリーダー格の男が振り返る。
瞬間魔力ナイフに糸状の物が絡みつき、振るう事ができなくなる。驚愕の表情を浮かべる間もなく、黒い影が顔前に迫り、強力なアッパーを喰らって意識が飛び人質を手放す。

「こちら不破、無線爆弾無力化完了。只今より、犯人の拘束に入ります。」

時間にして15秒、実に鮮やかな手並みだった。
但し彼はバインド魔法が使えるわけでもないので、早急に犯人達に物理的拘束をする必要があった目を覚まされると厄介なのだ。

後は1階の制圧が完了すれば作戦成功である。
その時隣から信じられない指示が飛ぶ。

「こちら作戦本部、突入部隊 突入を中断。指示あるまでその場で待機。」

全体指揮を執っていた一尉が、突入を中断させたのだ。

「A班了解」
「B班了解」

「な、なんで中断するんですか。突入を中断したら、2階の不破陸士が孤立します。それに、まだ犯人の拘束が終わっていません再度人質が取られる可能性があります。」

「うるさい、ヘリパイロット如きが現場指揮に口を挟むなっ!!
ここで本局の奴に手柄を取られては我々の立場がなくなる、雌狐の思い通りにはさせんわ。
事件解決はあくまで我々の手でされねばならんのだ。」

この馬鹿指揮官は人質の危険性より自分のプライドの方が大事らしい。
1階の犯人達が2階に上がり再度緊迫状態を演出した上で逮捕をしたいようだ、一番の懸案だった爆弾の無線が解決された事で強気になった様子だ。

指揮卓に設置されたモニターを確認すると、突入の音に気付いた1階の犯人達が2階にむけて階段を上り始めたところだった。

一尉のインカムを奪い叫ぶ。

「不破の旦那、階段から犯人2名行きます。」

「了解。」

不敵な返答が返ってくる。

ドガッ

「貴様、何を勝手な事をやっておるかッ、後で処分してやるから覚えておけ。」

殴られた左頬を撫でながら、モニターをちらりと見れば2階に上がったと同時に蹴り飛ばされる二人の男が映っていた。

「こちら不破、容疑者5名 全て確保。人質の保護をお願いします。」

一尉が苦虫を噛み潰したような顔をしている、俺は心の中でガッツポーズを取る。





現場での引継ぎを終えた不破の旦那が戻って来た。

「的確なアドバイス感謝します、グランセニック一等陸士」

旦那を送り返すヘリの中自分より年上なので気遣い無用と伝え会話を楽しむ。今日の現場に着いた時、フラッシュバックした光景を思い出し、意味もなく彼に問いかけてしまう。

「旦那、今日の人質の女の子がもし旦那の妹さんだったらどうしてました?」

「もし、下の妹だったら犯人はおそらく今もう生きていないだろうな。」

なんだか、背筋が冷えてしまった。

「万が一、人質を解放する時に自分がその子を傷つけてしまったとしたら旦那どうします?」

「それは、先程の仮定の話の続きでいいのか?」

頷いて肯定の意を返す。

「ふむ、すぐ下の妹なら『避けられないお前が悪い』で済ませるな。下の妹だった場合はまず謝罪した上で、傷を治す方法を全力で探すな。何があっても。」

「そうっすか、なんか上と下ですごく扱いに違いがありませんか?でも、強いっすね旦那現実から逃げたりしないんですから。」

「そうでもない、俺は現実を見ようとせず肝心な時に助けてやれなかった。ヴァイス、お前に何があったかは知らないがあまり自分を追い詰めすぎるなよ、それは自分だけでなく周りも不幸にしてしまう。反省が済んだら、自分を許す事も必要だ。」

「・・・まだ時間が掛かりそうです。」

「そうか、焦らずにな。大事な妹さんなんだろ。」





-病院にて-

私は今日眼科に定期健診に来ていた。

「ラグナ・グランセニックさん?」

突然黒尽くめの男の人に声を掛けられた。
なんだろ、誘拐犯?前に人質にされた時を思い出して一瞬身体が強張る。

「失礼、お嬢さん。俺は不破恭也、先日君のお兄さんと仕事をした仲間なんだ。」

そういって男の人は不器用に笑みを作る。でも、その笑顔がお兄ちゃんのそれに近いような気がして少し安心できた。

「そうでしたか、兄がお世話になりました。」

「しっかりした挨拶ができて偉いね。さすが、ヴァイスが自慢する妹さんだけあるな。」

「え、どういうことですか?」

「作戦から帰るヘリの中で、君への想いを熱く語ってくれたよ。」

「そうですかでも私、お兄ちゃんに多分避けられてます。」

「あいつは多分自分が許せないんだと思う。大切な君を傷つけてしまった自分が、だから君と向き合うのが怖いんだろうな、でも信じて待ってやってくれないか。いつかきっと、自分を許せる日が来る筈だから、その時はきっと君と笑いあえる筈だから。君が大好きな、君を大好きなお兄ちゃんを信じてあげて欲しいんだ。」

「分かりました。お兄ちゃんが、自分を許せるようになるまでお兄ちゃんを支えていきます。」

私の宣言に男の人はにっこり微笑むと、私の頭をぽんぽんと軽く叩いて去っていきました。
なんだか昔お兄ちゃんにしてもらった時のことを思い出して心が温かくなった。

夏祭り [リリカルなのはss 外伝]

海鳴の夏祭りの日、久しぶりの休暇を使って帰省することになった。
今回のメンバーは私達親子とお兄ちゃん親子、フェィトちゃん、はやてちゃん一家、流石にスバルとティアナまで休むわけにはいかなかったので彼女達はお留守番だ。

せっかくなので、私達は浴衣を着て行くことになった。
私は白に淡いピンクと赤の菖蒲の柄、ヴィヴィオは淡いピンク色のもの、雫ちゃんは濃紺のちょっと大人っぽいもの、お兄ちゃんは相変わらず黒一色のもの、会場に向う途中で合流したフェイトちゃんは黒に黄色と紫の菖蒲の落ち着いた感じのもので、はやてちゃんは紺に紫の朝顔の花柄、シグナムさんは淡い桜色に桜の花びらの柄、シャマル先生は薄みどりに縞柄、ヴィータちゃんは赤に金魚の柄それぞれみんなよく似合っていた。

夏祭りの会場に着くと、海鳴の親友達が待ってくれていた。
アリサちゃんとすずかちゃんに新しくできた家族達を紹介する。雫ちゃんを紹介した時に二人とも目つきが鋭くなって、『母親はっ?』て問い詰めてたけど。

始めて見る屋台にヴィヴィオは興味深々のようで、あれはなに、これはなにと質問攻めして来る。
今はお兄ちゃんに買ってもらった綿菓子を、雫ちゃんと一緒においしそうに食べている。

「あ~お魚さん。」

「あー金魚すくいやね。」

はやてちゃんが、ヴィヴィオに金魚すくいを説明する。
結果、ヴィヴィオ、ヴィータ、シグナムさんが挑戦する事になった。

ベリッ

「あっ・・・破れちゃった・・・」

ベリッ

「これ紙が弱すぎるじゃねえのか」

ッツバリッ

「クッ私としたことが油断した・・・」


ぽいが破れ 結果 三者惨敗


ヴィヴィオが悲しそうに破れたぽいを見つめる。
そんなヴィヴィオの頭をぽんぽんと軽く叩き、お兄ちゃんが屋台のおじさんにお金を払ってぽいを貰う。

「ヴィヴィオ、リクエストはあるか?」

「う~ん、その白いお魚さんと、黒いお魚さん。」

ヴィヴィオのリクエストを聞くと、ぽいを静かにプールに入れ手早く金魚をすくいあげる。

「すごい、すご~い。恭也おにいちゃん、すごいよ。」

とりあえずリクエスト分は取り終えたので、おじさんに断ってからヴィヴィオに再度挑戦させる。
後ろから手を添え、一緒に獲物を狙う。

「やった~、ヴィヴィオにも取れたよ。」

取ったのは小型の赤色の金魚、満面の笑みを浮かべて喜ぶ。
今度は自分ひとりで挑戦するとのことで、お兄ちゃんが離れる。


パシッ ビリッ

「あっ・・・」

ぽいに乗った金魚が暴れたためぽいが破れてゲームオーバーになった。



ビニール袋に入れてもらった三匹の金魚をに大満悦な様子のヴィヴィオにフェィトちゃんが尋ねる。

「ヴィヴィオその子達どうするの、ミッドに持って帰って飼うの?」

「うん、この白い子がなのはママで、黒い子がフェィトママ、それで赤い子がヴィヴィオなの。」

「そっか、じゃあ明日水槽買いに行かなきゃね。」



「そういえばお兄ちゃん、金魚すくいすごくうまかったけどどうして?」

「ふむ昔父さんと武者修行してた時に路銀が尽きてきて、飯がくえなくなった時にな貴重な蛋白源として・・・冗談だ。」

途中、みんなが引き出したのでお兄ちゃんは中断する。でも、お兄ちゃん真顔で言うからフェイトちゃん信じちゃってたし・・・本当のところは、剣士としての集中力と読み、力加減だそうだ。お姉ちゃんは後ろでぶんぶんと首を横に振ってたけど、シグナムさんは悔しそうにしてた。


そのあと、屋台をひやかしながら見て回って打ち上げ花火会場に向った。


もうすぐ打ち上げ花火が始まるようだ、来るのが遅かったので人垣の一番後ろになってしまった。
背の低いヴィヴィオ達には少し見にくいかもしれない。

「ヴィヴィオ、肩車するか?」

「いいの?恭也おにいちゃん。」

「ああ、別に気を使わなくていい。」

ヴィヴィオを右肩に乗せ立ち上がる。
視点が高くなりよく見えるようになったようで大はしゃぎしている。

「ヴィヴィオそんなに暴れると危ないよ。」

ヴィヴィオを注意しながらふと横を見ると、お兄ちゃんの左脇でヴィヴィオを見ている雫ちゃんがいた。
お兄ちゃんに、ヴィヴィオは私が預かるから雫ちゃんをお願いしようかと思っていたら。

お兄ちゃんが雫ちゃんの頭を左手で軽く撫でる。
お兄ちゃんの顔を見つめる雫ちゃんに、優しく諭す。

「雫、お前も遠慮する事なんてないんだぞ。親に甘えるのは子供の特権だからな。」

恥ずかしそうに頷く雫ちゃん。

「ヴィヴィオ、ちょっとごめんな。一旦降りるぞ。」

「どうしたの?恭也おにいちゃん。」

「もう一席に、お客さんだ。」

そういって屈んで、今度は左肩に雫ちゃんを乗せる。

「二人ともしっかり掴まってろよ。」

子供とはいえ二人を肩に乗せているとは思えないよう身軽さで立ち上がる。
二人とも満面の笑みを浮かべている。

そういえば昔、よく私もお兄ちゃんに肩車してもらったな。いつもと違う視点が新鮮だったのを今でもよく覚えている。
この子達にもそんな思い出を作って上げれたことをお兄ちゃんに感謝する。



しばらくして打ち上げ花火も終わり、私達はそれぞれの家に帰宅する。
今は、縁側でみんなでスイカを食べている。

「こんなのあったけど、みんなやる?」

お母さんが持ってきたのは線香花火だった。
各自一本ずつ持って、火をつける。

ジジジジ・・・・

パチパチパチ・・・・

ジー ポト

「あー落ちちゃった。でも綺麗だったね、なのはママ。」

「そうだね、ミッドに戻ったらみんなでまたやろうか。」





-おまけ-

ポトッ

「相変わらずお約束を外さないな、美由希」

「う~恭ちゃんがいじめる。」

天才の努力 [リリカルなのはss 外伝]

なのはの兄ちゃんは立場的には民間協力者であり、教導官の資格もないので原則教導に赴くことはないはずなのだが、その桁外れな戦闘能力ゆえ戦技教導隊からのオファーで教導官と共に指導に赴くこともあった。

近接戦闘のエキスパートという扱いなので、なのはよりもあたしと組むケースが多くその度になのはに『ヴィータちゃん、ずるい』と拗ねられて呆れてしまう。

その日もある陸士部隊の教導に赴き、基礎の動きを実践を交えて教え反復練習するように伝える。

一人の陸曹が不満そうに訴える。

「高町教官、我々が欲しているのは即使える力です。」

「戦技の上達に近道はないさ、日々の訓練の繰り返しそれだけだ。」

「それでは、特別教導の意味がないのではないですか。」

「努力するだけ無駄だと?」

「だってそうじゃないですか、いくら努力したところで凡人は天才には勝てませんよ。
もっとも、あなたの妹さんみたいに最初から膨大な魔力でも持ってれば努力なんてする必要もないんでしょうけど。」

陸曹の言葉に、そこに集まっていた隊士達が無言で頷く。

「君達は魔力が強ければ努力しなくても楽に勝てるし、逆に努力しても魔力が低ければ勝つ事はできないと考えているわけか・・・」

静かな口調ではあるが、その中には激しい怒りが混ざっているのがあたしにはよく分かった。
なのはが強いのは魔力量が多いからではなく、常に努力を怠らないからである。あいつが強くなるためにしてきた血の出るような努力を一番よく知っているなのはの兄ちゃんが上辺だけ見てふざけたことを言ってくる隊士達に怒りを覚えないわけがない。

「ありていに言えば、その通りですね。」

「ではそれを証明してみてくれ、俺は一切魔法を使わずに相手をしよう。もし、俺が負けたのなら非礼を詫び責任を持って本局上層部によりよい教導官の派遣を依頼する。但し、君達が負けたのなら俺の教導に付き合ってもらうぞ。」

「誰とやります、ここにいる全員俺と同じ意見みたいですけど。」

「全員同じ意見なら、全員まとめてで構わない。」

「「「「「!!」」」」」
《馬鹿にしやがって、白い悪魔の身内だからっていい気になってるじゃねえぞ》

「全力戦闘になりますから、非殺傷設定とはいえ怪我をされてもしりませんよ。」

「問題ない、怪我をした場合はお互い自己責任だ。ということでヴィータ教導官、勝手に話を進めて申し訳なかったですが模擬戦の許可をいただけますか。」

「はあ、どうせ駄目だって言ったてやるんだろ。まあ、この寝ぼけた連中の目を覚ますにはちょうどいい機会だからやり過ぎない程度ならいいぞ。」

「ふむ、努力はしよう。」



かくして、20対1の戦闘訓練が始まり、1分ともたずに終わる。

戦闘描写も何もない、『瞬殺』その一言。



「馬鹿、やりすぎだ。なのはの兄ちゃん。」

演習場には、痛みに呻き声をあげる隊士達。
なのはの兄ちゃんは意識を奪うような攻撃はせず、わざと激痛が残る攻撃を打ち込んだのだ。

まあ彼らの惨状は自業自得ではあるのだが・・・

後で分かったことだが、隊士達の負傷は骨折等は伴っておらずその後の勤務には支障は出ないレベルだったそうだ。怒っていても、力加減を間違えないところは流石といったところか。

さすがに魔法を一切使っていない相手に瞬殺されたとだけあって、その後は素直に指導に従うようになったのであたしの教導もスムーズに運んだ。

添い寝 [リリカルなのはss 外伝]

6課解散後 辺境自然保護隊に勤務しているエリオとキャロの二人がちょっとまとまった休みが取れたとの事でフリードを連れて久しぶりに本局の私達のところに遊びに来てくれた。

二人とも解散した時よりも背もまた伸びて成長を感じさせてくれた。
その日の夜ははやての好意で、八神家で歓迎パーティーが開かれた。参加者は特捜課のメンバー、シャマル先生、ヴィヴィオ、都合のついたシャーリーにも来てもらった。

はやての手料理とおいしいお酒をみんなで楽しみ宴もたけなわな頃、気になった事を確認する。

「そういえば二人とも泊る所はもう決めてあるの?」

「ええ、駅前のビジネスホテルに部屋を取ってあります。」

「そう、なら大丈夫ね。」

「なあ、エリオ。部屋はいくつ取ったん。」

「え?一つですよ。別々で取ったらもったいないじゃないですか。」

「ぐふふふふ、エリオ、いくらキャロが可愛いからといって襲ったらあかんで。」

あ、セクハラ親父降臨。はやてがニヤニヤしながらエリオをからかう。
二人とも真っ赤になってる、言われた意味がある程度は理解できるようだ。キャロも昔は異性に対する羞恥心が乏しくて心配していたけど今はそれなりに出てきたようで一安心だ。

「そ、そんなことしませんよ。」

「"そんなこと"ってどんなことなのかな?お姉さん聞いてみたいな」

続いてセクハラ親父二号、シャーリーの突っ込みが入る。

「し、知りません。」

ごまかすようにお茶に口をつけるエリオ。

「ふ~ん、ま、そういことにしといてあげる。でも・・・避妊はしなくちゃ駄目よ。」



《《《ブッ》》》

あまりにストレートな表現に何人かが吹き出す。
スバルとティアナがそれぞれエリオの左右の肩を叩き。

「「エリオ、あたしは信じてるよ」」

「お二人とも、笑いながら言ってたら説得力ないですよ。」



クイ クイ

袖を引かれて目をやれば、ヴィヴィオがこちらを見つめていた。

あ・・・これは・・・もしかして『コウノトリさん』の話をしなくちゃいけないパターン?と思って少し身構え彼女に尋ねる。

「どうしたの、ヴィヴィオ?」

「あのね、エリオおにいちゃんとキャロおねえちゃんが一緒のお部屋だとなんでいけないの?」

『コウノトリさん』の話でなかった事に安堵しながら教えてあげる。

「家族以外で結婚前の男の人と女の人が同じお部屋に泊ったり、同じ家で一緒に寝るのはあまりよくないことってされてるの。」

私の答えを聞いたヴィヴィオが難しそうな、それでいてどこか悲しそうな顔をする。

「ヴィヴィオには、難しかったかな?」

横で私達のやり取りを見ていた、なのはが声を掛ける。

「ううん、そうじゃないの。恭也おにいちゃんの所にお泊りに行っちゃいけないんだと思ったら寂しくて・・・」

ヴィヴィオの答えに私となのはは顔を見合わせ微笑する。
なのはが悲しそうにうつむくヴィヴィオの頭を軽く撫でながら、教えてあげる。

「ヴィヴィオとお兄ちゃんは家族だよ。だから、お泊りしても全然問題ないんだからね。」

なのはの答えを聞くや否やうつむいていた顔をブンと上げ、希望に満ちた顔を見せる。

「本当!? なのはママ。」

「うん、本当。」

「やった~、じゃあヴィヴィオ 恭也おにいちゃんにまた一緒に寝てもらうんだ。」

「「え?一緒って。」」

「うん前にお泊りした時にね、恭也おにいちゃんのベットを借りて寝たの。隣のベットには雫おねえちゃんが一緒に寝てくれてたけど寂しくて眠れなくって、夜中にリビングに行ってソファで眠ってたおにいちゃんにお願いしてベットで一緒に寝てもらったんだよ。おにいちゃんにくっついて目を閉じたら不思議と安心できて、頭を撫でてもらってるうちにすぐ寝ちゃったんだ。朝起きたら、反対側に雫おねえちゃんがいてちょっとびっくりしちゃったの。
目を覚ました私達におにいちゃんは『二人とも甘えん坊だな』って言って、雫おねえちゃんが『お父様は意地悪です』って拗ねてたんだ。」

先日、ヴィヴィオが雫の所に遊びに行った時、夜遅くなったこととたまたま私もなのはも急用で帰れなくなったので恭也さんの家にお泊りしたことがあったがその時の出来事のようだ。

「そっか、そうだよねお兄ちゃんと一緒に寝てもらうと確かに守られてるって感じがして安心して眠れるもんね。私も昔は恐い夢を見ると枕を持っていつもお兄ちゃんの部屋に行ってたな。その都度、苦笑いしながらお布団に入れてくれて私が眠りにつくまで頭を優しく撫でてくれてたな。」

なのはが懐かしそうに話してくれる。でもなんだか、うらやましい。

「なのは~さん、それっていつ頃のお話しなんですか?最近は行ってないんですか、お兄さんのところ。」

シャーリーが新たな獲物を見つけたようだ。

「もちろん、今のヴィヴィオくらいの頃の話だよ。そりゃ、久しぶりに一緒に寝たいかなって・・・(ゴニョゴニョ)・・・でも恥ずかしいし、お兄ちゃんも嫌がるだろうから。」

「大丈夫や、なのはちゃん。恭也さんやったら、なのはちゃんのお願いならオールオッケーやで。」

はやてまで加わって暴走を開始する。

「なのはママ、今度 恭也おにいちゃんと雫おねえちゃんをお家に招待すればいいんだよ。それでね、フェイトママも一緒にみんなで眠るの。きっと楽しい夢が見れるよ。」

ヴィヴィオが嬉しそうに提案する。多分そんなことになったら、恭也さんのことが気になって眠れないだろうな私。

「ま、フェイトちゃんもなのはちゃんも健全なお付き合いは構へんけど、マスコミにはきーつけとってや。管理局のエースが『お泊り愛』なんて格好のゴシップネタにされかねへんで。」

そうなのだ、良くも悪くも有名になってしまった私達はゴシップ記者に追い掛け回される事もしばしばあるのだ。
また恭也さんに関してはは表だって公表されていないものの、犯罪者としての経歴があるため話題に上る事自体管理局はあまりよろしく思っていないようだ。
私達自身は全く気にしていないのだが、恭也さんは自分と関わることによって私達の名誉や経歴が傷付くのを恐れているようだった。
管理局の不正を暴くために行動した彼が、犯罪者扱いされた事実が今更ながら恨めしい。



「そうだ、なのはさん。熱愛報道されていたスクライア司書長とはどんな関係なんですか?」

シャーリーが先日の写真週刊誌に掲載された記事の真偽を聞く。



「ユーノ君は大切なお友達だよ。」


「「「「はぁ~」」」」

二人をよく知る人達が溜息を吐く。

「ユーノ君も報われないわね。」

「まあ、それがなのはだということだろ。」

「???」

シャマル先生とシグナムの会話がなのはには理解できていないようだった、恭也さんといいなのはといいなんで高町兄妹は自分に向けられる恋愛感情に疎いんだろう?桃子さんは結構鋭いみたいなのに、やっぱり恭也さんの影響なのかな、なのはにとってはお兄さんでありお父さんみたいな存在だって言ってたから。

看病 [リリカルなのはss 外伝]

-38度5分-

《失敗したかな》

朝起きて、体のだるさと頭痛を感じてフェイトちゃんに内緒で体温を測ったところ熱が出ていた。
仕事を休んで周りに迷惑をかける訳にはいかないので風邪薬を飲んで手早く着替えを済ます。

先に早番のフェイトちゃんを先に送り出して、ヴィヴィオを駅まで送っていく。
本局に着いて、いつも通りにデスクワークを始める。お昼になったので、食堂に行こうと立ち上がりかけてバランスを崩し椅子にへたり込んでしまう。その様子を見ていたフェイトちゃんが心配そうにこちらを覗き込んで声を掛けてくれる。

「大丈夫、なのは?顔色悪いよ。」

「大丈夫だよ、フェイトちゃん。ちょっとふらついただけ。」

再度、デスクに手をついて立ち上がる。



「なのは、こっち向いて。」

こつん

「「!!!」」

呼びかけに振り向いた私のおでこにフェイトちゃんがおでこをつける。

「フェ、フェイトちゃん ど、どうしたの。(///)」

「おお、百合の香りやな~」



「やっぱり、すごい熱だよ。なのは。」

皆にため息混じりに呆れられ、強制的にメディカルルームに連れて行かれてシャマル先生に怒られてしまう。


「もう、なのはちゃんはいつも無茶し過ぎです。私からはやてちゃんには連絡しておくから、今日明日はお家で安静にしててね。」

「え、でも仕事が・・・。」

「今は大きな事件は抱えてないんでしょ。それとも私の言う事は聞けない?」

「そんな事は・・・」

「そんな困った患者さん対策として先程強力な助っ人を呼びましたからね、そろそろ着くと思いますよ。」

「?」

「シャマル先生すみません。妹がご迷惑をかけたようで。」

「いえいえ、じゃあ恭也さん後は頼みましたよ。」



タクシーで自宅のマンションまで向う。
部屋までの道のりお兄ちゃんがおんぶするか抱えていこうかと言ってくれたが、流石に恥ずかしいので肩だけ借りて家まで戻る。
家に戻ると既に連絡を受けていたらしいハウスキーパーのアイナさんが着替えと寝床の用意をして待ってくれていた。
着替え終わって客間の布団に横になる。風邪を引いたのは何年振りだろう、子供の頃はたまに風邪を引いて誰か彼かに看病してもらってた気がする。

いつの間にか眠っていた私は誰かの帰宅の音で目を覚ます。頭には冷たいタオルがのせてあった。
ヴィヴィオが帰って来たようだ。私のところへお兄ちゃんと一緒にやってきて心配そうに覗き込む。

「ママ、大丈夫?痛くない。」

「うん、今日一日休めば元通りだから心配しないで、ありがとう、ヴィヴィオ。
風邪うつっちゃうといけないから一緒にいてあげられないけどごめんね。」

少し悲しそうな表情を見せるヴィヴィオにお兄ちゃんは優しく諭す。

「ヴィヴィオが風邪を引いたらママ達が悲しむぞ、なに今日一日我慢してヴィヴィオがママの回復を神さまにお願いすればきっとすぐよくなるさ。」

コクンと頷いてヴィヴィオは部屋を出て行く。

「さて、少し早いがおかゆぐらいは食べれるか?」

「うん、寝て少しは体も楽になったから。」

「分かった、少し横になって待ってろ。」

それだけ言って、お兄ちゃんも部屋を出て行く。



30分程してお兄ちゃんがお盆におかゆとりんごを載せてやって来た。
布団から半身を起し、上着をかけてもらう。

「食べさせてもらってもいい?」

お兄ちゃんがレンゲにおかゆをすくいフーフーとさましてから差し出してくれる。
流石に少し恥ずかしくお兄ちゃんも私も真っ赤になりながらも昔のように甘えて食べさせてもらう。

一緒に持ってきてもらったりんごはかなりいびつな形をしていた。

「ヴィヴィオが『なのはママに早く元気になってもらうんだ』って一生懸命皮むきしてくれたからな。俺が一緒に見てたから別に怪我はしてないから心配するな。」

いつものりんごよりすごくおいしい気がした。

「さて、また横になって休むといい。アイナさんはもう上がられたから、汗を掻いて気持ち悪いかもしれんが着替えは悪いがフェイトが帰ってからしてもらえ。」

「うん、ありがとう、お兄ちゃん。」

「ああ、おやすみなのは。しっかり休むんだぞ。」

そうだった、子供の頃も私が風邪を引くとお店が休めないお母さんに代わって決まってお兄ちゃんが看病してくれてたっけ。

フェイトちゃんが帰宅して、着替えを手伝ってもらってから再び眠りにつく。





-翌朝-
「おはよう、フェイトちゃん、ヴィヴィオ。」

「おはよう、なのは。起きて来て大丈夫なの?」

「おはよう、なのはママ。元気になった?」

「うん、心配かけてごめんね二人とも。おかげさまですっかり元気になりました。」

「そう、じゃあとりあえず朝ごはんにしよう。昨日、恭也さんとヴィヴィオがなのはの為に野菜スープ作っておいてくれたから。」

「そうなんだ、ヴィヴィオありがとう。」

「えへへ、どういたしまして。」

頭を撫でてお礼を言うと、くすぐったそうに笑ってくれる。

「なのは、今日は一日ゆっくり休んでてね。」

「駄目だよ、二日も仕事空けるわけにはいかないよ。それに隊長クラスが二人も休んだらはやてちゃんの負担も大きくなるし。」

「大丈夫だよ、なのは。シグナムや、ヴィータもいるし、ティアナやスバルだってもう一人前だよ。それに何かあったら私が出るし。」

「駄目だよ、フェイトちゃんはちゃんと休まないと。もともとオフシフトなんでしょ。」

「ちゃんと休んでない人が言っても説得力ないよ、なのは。」

「・・・・・・」

過労で風邪を引いた身としては言い返す言葉がない。
そんな親二人のやり取りを見ていたヴィヴィオが私に告げる。

「あのね、恭也おにいちゃんがねなのはママがお仕事行くって言って駄々こねるようなら『子供の頃のなのはさんの華麗なる失敗談を後輩にばらすぞ』って言ってたよ。」

「「・・・・・・・」」

私が生まれた時から知っているお兄ちゃんにはどうやら逆らえないようです、くすん。

「そうだ、恭也さんからもう一つなのはに伝言。『無茶をし過ぎだ、子供に心配かけさせてどうする。いい加減、周りを頼ることを覚えろ』だって。『フェイトにも当てはまることだぞ』って言われちゃったけどね。」

「もう、一番無茶してる人に言われたくないな。お兄ちゃんこそ、私達を頼ってくれたっていいのに。」

「そうだね、恭也さんにとって私達って頼りがいがないのかな。」

お兄ちゃんに認めて欲しくて、力になりたくて今まで頑張ってきたけど頼りにされてないと思うと少し寂しい。
でもその答えは意外なところから返ってきた。

「そんなことないよ、フェイトママ、なのはママ。恭也おにいちゃん言ってたもん、『俺はなのはやフェイトをはじめ他のいろんな人にいつも助けてもらってる』って。
前にねヴィヴィオ教えてもらったの『自分だけでは出来ない事を誰かに助けてもらうのは悪い事でも恥ずかしい事でもないんだよ』って、わたしが『恭也おにいちゃんが困ってる時は助けてあげるね』って言ったら、『頼りにしてるよ、ヴィヴィオ』って言っていい子いい子してくれたんだ。」

ヴィヴィオがその時の様子を思い出しながら嬉しそうに教えてくれる。
私とフェイトちゃんは顔を見合わせ、小さく笑う。

お兄ちゃんから見たら私達はまだまだ頼りないかもしれないけれど、きっと何か手伝える事があるはずだからこの想いをいつか伝えたい。

その時 [リリカルなのはss 外伝]

裁判が全て終わり、早速なのはに報告しようとして異変を察知し私達がなのはの元に駆けつけたのは、ちょうど赤い服を着た女の子が『鉄槌』を振り上げなのはに振り下ろす瞬間だった。

間に合わないと思わず目を閉じた私の耳に、金属の衝突音が聞こえた。
恐る恐る目を開けるとなのはの前で小太刀を構え『鉄槌』を受け止める黒尽くめの若い男の人がいた。

「仲間か?」

「いや、この子の兄だ。」

そうだ、なのはからのビデオレターに映っていたあの人だ。

「兄貴かなんだか知らないが、邪魔するなら潰す。」

「おもしろい、妹を傷つけてくれたお礼はしっかりさせてもらうぞ。」

女の子が『鉄槌』を振り回して、彼に攻撃を仕掛けるが全て避けられ逆に足を払われ体勢を崩したところに容赦ない蹴りが入り、吹き飛ばされる。実際にはバリアジャケットがダメージを防いだようなので威力は軽減されていたようだが。



女の子が離れた隙に、私達はなのはの元に駆け寄り。事情の確認と治癒魔法を施す。
ガラガラと音を立て、女の子が立ち上がってくる。

なのはをユーノに任せ、女の子に罪状を告げ投降を呼びかけるが彼女は無視し空へ逃げる。
なのはのお兄さん(ビデオレターで名前が恭也さんだって事は知っていた)に簡単に事情を話し、私とアルフで女の子を追う。

何とか追い詰め、事情を聴こうとした時に下から警告がとんできた。

「フェイト、避けろ!!」

咄嗟に後ろに引くと、今まで自分のいた空間を凪ぐ剣が見えた。
続いて突き出される剣は横から飛んで来た棒状のもの(後で聞いたら飛針という投擲用の武器らしい)で針路変更を余儀なくされた。

新たに現れた女性剣士と格闘家らしき男、一旦距離を取りなのは達の元に戻る。
そこで、ユーノと相談して結界を破り転送して逃げることにする。結界を破るまでの時間稼ぎとしてアルフが格闘家の男、私が女性剣士、ユーノが女の子を相手するつもりだったが、恭也さんから修正が入った。

「フェイト、剣士の相手は俺がしよう。あの得物だと俺が相手をした方がよさそうだ。足場はユーノにあらかじめいくつか作ってもらうから空中でも何とかなるだろう。フェィトは赤髪の女の子の方を頼む、ユーノはなのはのガードと結界の解除を頼むぞ。」

「そんな、無茶です。魔法も使えないのに闘うなんて。」

「なに、心配するな。勝てないまでも、時間を稼ぐ事ぐらいはしてやれるさ。」

「お兄ちゃん・・・」

「なのは、もう少しだけ我慢してくれ。すぐ終わらせるから。」

「分かりました、お願いします。でも、無理はしないで下さい。」

「了解、頼んだぞ三人とも。」



恭也さんは宣言通り、魔法を使わず女性剣士の足止めに成功していた。
余裕で攻撃をかわしながら、何太刀か当てていく。しかし、どうやらバリアジャケットに阻まれて有効打とはなっていないようだ。

何度目かの対峙の後、女性剣士の怒声が聞こえたかと思うと彼女の魔力が膨れ上がり、剣から炎の一閃が恭也さんに撃ち出された。しかし、その攻撃が彼に命中することはなく逆に接近した彼の攻撃が小手に決まる。今まではなんらダメージを与えていなかった筈の攻撃がなぜか効いた様で女性剣士は痛みに顔をしかめる。

「貴様、今何をした。」

「さあな、魔法を超越した超能力じゃないのか。敵に手の内を明かすほど俺は呆けてないんでな。」

後で聞いたところによると、『徹』と呼ばれる御神流の甲冑越しにダメージを伝える技だそうだ。
ちなみに女性剣士が怒っていたのは、彼が情報を引き出すためと冷静さを失わせて攻撃を読みやすくするために彼女の矜持をわざと傷つけたからだそうだ。



ユーノから結界の解除が困難だと知らされて、なのはが砲撃で結界を撃ち破ると提案してきた。
現状手立てがない以上仕方がないと、それまで敵をなのはに近づけさせない事に各自専念する。

「ユーノ、なのは、気を付けろ。気配が一つ増えた。」

女性剣士と対峙を続けていた恭也さんがスターライトブレイカーの発射体勢に入った二人に警告をとばす。



ズブッ

「「「「「!!!!」」」」」

数瞬後なのはの胸元から手が突き出され、なのはが苦しみ出す。
あまりのことに固まってしまう、ユーノ。
なのはの元に駆けつけようとして、それぞれ邪魔をされる私とアルフ。



そんな中、一人なのはの元にたどり着いたのは恭也さんだった。

なのはの異変に気付いた彼は、目の前の相手を無視してなのはの元へ向う。

途中、その行動を阻止すべく女性剣士が進路上に割り込むが

《・・・どけ》

背筋を凍らせるような冷たい声と共に振りぬかれた二刀で撃墜される。

屋上に着くや否や、彼の姿は掻き消え次に現れたのはなのはの胸元から出ている手首を小太刀で突き刺したところだった。

《イャー》

女性の悲鳴と共に、手が抜かれる。



「てんめぇー」

赤髪の女の子が私から離れ恭也さんに向って背後から『鉄槌』を振り下ろすが、サイドステップで避け、側頭部に回し蹴りを入れて屋上から弾き飛ばす。

「フェイト、右前方ビルの屋上。奴らの仲間が一人いる。」

恭也さんに言われたところを見ると、今まさしく転送魔法を発動している魔導師が確認できた。
急行してバルディッシュを振り下ろすも、一足違いで逃げられた。

他の襲撃者達も既に転送して逃亡したようだ。





その後、負傷したなのはと共にアースラに収容され本局に向う。
リンディ提督から今までの事が恭也さんに説明される、今回の事件経過の流れの説明を受けている時恭也さんの表情が消えていたのは気のせいなのだろうか。

その後、なのはを守れなかった事を謝る私に、

「"三人"は全力でなのはを守ってくれたよ、お蔭で最悪の事態にはならずに済んだ。ありがとう。」

って言ってくれた。

その言葉の意味を理解した、クロノが抗議をしようとしてリンディ提督に止められていた。
もし抗議していたなら、容赦ない反撃が烈火のごとく襲ったであろう事は容易に想像できた。

隊長戦 [リリカルなのはss 外伝]

それは、デバイスの整備で本局に来ていた恭也さんにスバルが言った何気ない一言から始まった。

「この前とかの戦闘で恭也さんが強いのは分かったんですけど、やっぱりあの"隊長戦"は恭也さんでも勝てないですよね。」

「???」

「あんたね~いきなり"隊長戦"って言ったって何か分かるわけないでしょ。」

スバルの説明不足を詫び、内容を説明する。
内容を聞き終えた恭也さんは苦笑しながら『それは新手のいじめか』と言い多分勝てないんじゃないかと返した。

「「やっぱり、ですよ 「いや、そんなことはないと思うぞ」 ねー」」

「「シグナムさん」」

背後から突然現れたシグナムさんが、恭也さんなら条件次第では負けないのではないかと言ってくる。

「それは、買い被り過ぎだシグナム。いくらなんでもお前さんたち歴戦の勇者相手じゃ分が悪すぎる。」

「ふむ、我々はリミッター制限されているからな決して圧倒的な差にはならないと思うのだが。」

「なんや、おもしろそうな話やね。みんなも、デスクワーク続きで最近身体動かしてないみたいやしストレス解消がてらやってみよか。」

さらなる闖入者、八神課長の独断により旧6課の訓練でよく使った森林での"隊長戦"の実施が決まった。
あたしとスバルは何かと理由をつけて何とか回避する事はできたが、恭也さんは課長に押し切られてしまったようだ。



隊長戦当日、八神課長から今回のルールが説明される。恭也さんが逃亡犯という設定で訓練を行うようだ。

「そやな、制限時間逃げ切りのルールやと一度も交戦なしに恭也さんの勝ちで終わりそうやから、制限時間内に二つある転送ゲートの内どちらかにたどり着いて起動するか、全員を倒すかすれば恭也さんの勝ちで逆にそれまでに拘束されたり、起動できなかったら負けで。旧隊長陣は制限時間内に恭也さんを確保できれば勝ちというところやな。
あと転送ゲートには仕掛がしてあるんよ、それぞれにロックが掛かっていてロックを解除してゲートを起動するには合計15分間デバイスによるアクセスが必要、但し旧隊長陣エリアにあるゲートだけは3名を倒した時点でロックは解除されるように設定してあるから。
制限時間は40分、当たり前やけどフルドライブは使用禁止、撃墜判定は降参の意思表示もしくは意識消失をもってするよ。あともちろんフィールドから外に出た時点で撃墜扱いやよ。」



Ready Go!!



-ティアナ's view-

模擬戦開始から10分、不思議なことが起きていた。フィールドから恭也さんの姿が消えたのだ。
最初、恭也さん側の転送ゲート付近に彼の姿が確認できていたがしばらくして確認できなくなったのだ、フィールドから出ればブザーが鳴るのでフィールド内にいるのは確かなのだが、そこら中に飛ばしてあるサーチャーでも、魔力探知でも見つけることができない。

どうやらそれは、旧隊長陣も同じようで慎重に相手陣営の転送ゲートに近付いていた。
フォーメーションとしては、アッタカーをヴィータさん、シグナムさん、センターガードをなのはさんが担当、シグナムさんとなのはさんは上空からヴィータさんは地上から接近、オールラウンダーのフェイトさんは自陣の転送ゲート前に守備要員として残っていた。


ヒュン

「「「!!!」」」

ヴィータさんが木々の間を注意深く進んでいると、横合いから飛針が飛んできた。
それをシールドで弾くと、今度は若干ずれた位置から再度飛針が飛んでくる。

「見つけた、アイゼン」

《Ja.》

「シュワルベフリーゲン」

4発の鉄球が飛針の発射点と思われる箇所に飛んでいく、続いて飛び出してくるであろうターゲットに向けてアッタカー二人が地上と空から接近する。
なのはさんはアクセルシューターを待機状態にして構える。

広域モニターに目をやったところなのはさんの右斜め後ろの立ち木がわずかに揺れたような気がした。
慌ててなのはさんを捉えていたサーチャーの画像を見ると、後ろから口元に布切れを当てられ意識を落とし、恭也さんの左腕に抱えられたところだった。

『まず一人』

恭也さんの呟きが聞こえた。
どうやら彼は"目"を最初に潰しに来たようだ。



ゴォォー

恭也さんがいた空間を炎の一閃が通り過ぎる。
恭也さんの襲撃に気付いたシグナムさんの『飛竜一閃』を放ったようだ。

でもあの状況であの攻撃だとなのはさんにも思いっきり被害が及ぶような・・・

「おい、シグナム。味方を殺す気か。」

「いや、なのはは既に死亡扱いだそれに、敵であるなら放置して逃げればよかろう。もっともお前がそれができないと踏んでの攻撃だがな。」

「ふむ、俺の甘さを見込んでの攻撃か。」

「そういうこった、アイゼン ラケーテンフォルム」

《ja.》

なのはさんを抱えたまま地上に逃げた恭也さんにヴィータさんのグラーフアイゼンが、なのはさんを抱えた状態の左から迫る。

「『香月』カートリッジロード、刀身強化。」

《はい、主》

恭也さんは槌の部分をシールドで受けるのではなく抜刀した右の『八景』で柄の部分を受け横に流す。
流されたグラーフアイゼンは地面を叩き大量の土煙を上げる。

その隙に恭也さんは森の中に姿をくらました。





-なのは's view-

私はおなかから来る振動と爆発音に目を覚まし、今までの経緯を思い出してみる。先行した二人を追って上空で警戒待機をしていたところで背後から口元に何かを当てられ気を失ったはずだ。
現状を確認してみると、なぜかお兄ちゃんに左腕一本で抱えられて移動中だった。

「ちょっと、お兄ちゃん。どうせなら、もっと優しく抱いて欲しいな。」

お兄ちゃんを見上げて言ってからその台詞に恥ずかしくなって再度、頭を下げる。

「死人が喋るな、舌噛むぞ。文句があるなら、問答無用で攻撃してきたシグナムとヴィータに言ってくれ。」

そう言ってから、私を地面に仰向けにして下ろす。

「歩けるか?」

「う~ん、まだちょっとふらふらするかも。それより、さっき私に何を嗅がせたの?」

「クロロホルムの強化版みたいなものだ。忍に頼んで作って貰った、人畜無害なのは確認済みだ。」

「忍さんって言う時点でかなりあやしいんんですが・・・」

「・・・多分大丈夫だろ・・・美由希で試してみたが特に問題なさそうだったし。
いくら訓練とはいえなのはや、フェイトに意識を落とすレベルで斬撃を撃ち込むのは忍びなかったのでな。」

「お兄ちゃん・・・」

いい雰囲気になりかけたところで邪魔が入る。

『シュワルベフリーゲン』

《protection》

ヴィータちゃんの誘導弾が『香月』の張ったシールドにあたり爆発する。
思わず、お兄ちゃんの首に抱きつき密着する事によって衝撃を避ける。

「なのはの魔力反応を追ってきたか。」

空いている左手を私の膝裏にあて私を抱えて立ち上がる、お兄ちゃん。

「正解だ。なのはの兄ちゃん。」

グラーフアイゼンを振り上げ、眼前に迫るヴィータちゃん。

「ふむ、意味もなく俺がここに逃げたとでも思ったのか?」

お兄ちゃんが屈んで、振り下ろされようとしていた槌をかわすべくバックステップで逃げる。
ヴィータちゃんはそれに構わずグラーフアイゼンを振り下ろすが途中で不自然に動きが止まる。

「なにっ!?」

木々の間に何重にも張られていた細い鋼糸がグラーフアイゼンの柄を止めていた。

「く、こんなもの引きちぎれアイゼン。」

《Ja.》

時間にして数秒の空白、だがそれだけでお兄ちゃんには充分だったようだ。
動きが止まったヴィータちゃんに右からの回し蹴りが入る。ヴィータちゃんも咄嗟にグラーフアイゼンで止め、自ら力の進行方向に飛んだのでダメージそのものは大してなかったようだが数メートルの移動を余儀なくされた。


《ビィィィー》

フィールドを割った合図が鳴り響く。
どうやら、フィールドギリギリの位置にあらかじめ罠を用意して誘いこんだようだ。

「これで、二人目。」

「あ、あの~お兄ちゃん。そろそろ下ろしてもらえると嬉しいかなって・・・(もちろん、これはこれで嬉しいんだけど何だかすごく恥ずかしいし(///)」

「ふむ、これがユーノだったら首根っこ掴んで盾代わりにでもするんだがな。」

何気に酷い事を言いながら、右の八景で飛び込んできたシグナムさんの剣を弾く。

「ちょ、シグナムさん当る当るからその剣筋だと思いっきり私に当りますって。」

「気にするな、なのは。痛いのは最初だけだ。あとは、何も感じなくなる。」

「それって、死んで痛覚がなくなるって事じゃないのかシグナム。」

「・・・ふむ、そうともいうかもな。」

ちょっと二人してなんて事言ってるんですか、あとで頭冷やしてあげますからね二人とも。






-はやて's view-

何度か打ち合いをしながら、恭也さんは草木の密集地域にシグナムを引き込む下草が生い茂り背の低い立ち木が所狭しと生えているこの場所ではシグナムの武器は大きすぎて満足に振るえない。そんな中でも、突きを主体とした攻撃方法にする事で、反撃の隙を与えないのは流石といえた。


ズシャ


しばらくそんな攻防が続いたところで、シグナムがいきなり顔面から転んだ。うわっ、痛そう・・・。
下草に巧妙に隠匿されていた鋼糸に足を取られたようだ。

「さらばだ、シグナム。」

その隙に恭也さんはきびすを返し再び姿をくらます。
しばらくしてプルプルと震えながら起き上がったシグナムの鼻は少し赤かった。
このまま後を追っても発見も困難であり追いつけないと判断したのか、上空に出てフェイトちゃんと合流する事にしたようだ。
空に上がる途中、何もないところでいきなり何かにぶつかったかのように急停止する。
サーチャーを近付けよく観察すると、高い立ち木の間に鋼糸が網状に張ってあった、いつの間に張ったんだろう。
シグナムが顔を真っ赤にして『レヴァンティン』を『シュランゲフォルム』で振るう。





-フェイト's view-

シグナムから怒りに狂った念話が届いた時、なのはの魔力反応に気付いて振り返る。そこにターゲットがいた。後数瞬で彼の間合いだ。

「!!!」

突然のターゲットの出現と何気に照れ笑いしながらも嬉しそうにしてるなのはの状態に思わず動きが止まる。魔法を打ち込むにも、バルディッシュで斬り掛かるにもなのはにダメージが及ぶ恐れがあり判断が鈍る

「ふむ、フェイトにはこの手は有効だったか。」

「な、何が・・・むぐ」

恭也さんの呟きと共に、口元に布切れを当てられ意識を手放す。
意識が薄れ、前のめりに倒れ込むところを逞しい腕で支えてもらったような気がする。



ロック解除、24分で決着が着いた。

憧れの人 [リリカルなのはss 外伝]

6課時代 食堂で強さを求める理由をなのはさんに聞かれた時、少し気になっていた事を聞いてみた。

「あそうだ、そういえばなのはさんには"憧れの人"っているんですか?」

「うん、いるよ。昔かっらずっと憧れ続けてる人が。私もその人みたいに強くなりたくて今でも頑張ってる。私もねこの仕事に就く時 聞かれたんだ、『何の為に力を求めるのか』って。その時私答えたんだ、『悲しい出来事 理不尽な痛み どうしようもない運命 そんなのが嫌いで認められない そんなモノからみんなを守りたい だからそれを打ち抜く力が欲しい』って。
その私の答えに『最後まであきらめず、お前の信じた道を歩んで行け』って笑いながら応援してくれた。」

「なのはさんが憧れ続けてる人ってそんなに強いんですか?」

めちゃくちゃな強さを持つなのはさんが"強い"と評する人物に、エリオが驚愕の表情で質問する。

「うん、そうだよ。純粋な意味での戦闘能力だけでなく、意志を貫く強さを持った頼りがいのある人なんだ。私は、常に誰かの笑顔を守り続けていたその人の背中を見て育ったんだ。いつの日にか、その人に認めてもらえたら嬉しいなと思ってるよ。」

なのはさんが見せる憧憬の表情は、どこかうっとりしたような感じで本当にその人のことが大事なんだろうなっていうのがよく伝わってきた。

ちなみにティアの憧れはお兄さん、エリオとキャロはやっぱりフェイトさんらしい。

「いつか、スバル達にも紹介できるといいな私の憧れの人。」

「そうですね、是非お願いします。」
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