SSブログ

58章 本棚2 [リリカルなのはss]

ハッ

目覚めて体を起こそうとして自由が利かない事に気付く。
見ればどことも知れない無機質な薄暗い一室で両手両足を縛られ拘束された状態でソファに座らされていた。
斜め向かいには同様の状態の親友の姿、未だに目覚めていないようではあったが着衣の乱れもなく静かに上下する胸元に安堵する。

ツッ・・・

気の緩みが出た所で、右の脇腹辺りに軽い痛みを覚え顔をしかめる。

(全く、痕でも残ったらどうしてくれるのよ。
恭也さんに見られたら恥ずかしいじゃない。)

そんな事を思ってから、そこを見られる具体的な状況を思い浮かべて一人真っ赤に頬を染める。
勝手な妄想に身悶える自分に頭を抱えたくなるも、両手を後ろで縛られている現状では物理的にできず頭を激しく横に振って幻影を追い出す。
一人で喜劇を演じていると、向いの眠り姫が薄っすらと瞼を開き目覚めたようだった。

「気が付いた?すずか。」

「アリサちゃん。」

私の呼び掛けに反応するも、置かれた状況からその瞳と声は不安に揺れていた。
(それが当然の反応よね…)
そんなすずかの様子を見ながら妙に落ち着いている自分に内心苦笑してしまう。
(流石に三度目ともなれば慣れもするってもんでしょ、むろん慣れたくもなかったけどね…)
でも今はそんな事より、不安で押し潰されそうになっている親友を勇気付ける方が先。

「大丈夫よ、すずか。
どうやら犯人は私達の命が目的って訳でもないみたいだからすぐに殺されることもないし、日付が替わっても帰宅しなかったら家の誰かが異変に気付いて助けに来てくれるわよ。」

なるべく明るい口調で励ますものの、まだその目に不安は消せない。
そこで私は魔法の言葉を掛ける。

「大丈夫、必ずまた助けに来てくれる、そうでしょ。」
「うん、そうだね。きっと来てくれるよね。」

名前は出さなかったけどあの子にも私の思い描いた人が伝わったようだ、その瞳と声に震えは既になくあの人に対する信頼のみ窺えた。
58章 本棚158章 本棚3 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。