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出会い [リリカルなのはss 外伝]

私が彼に初めて会ったのはジュエルシードを集めていた時。
時空管理局に捕捉されて、私達を拘束するために来たクロノの魔法攻撃を受け辛くもその場を逃げ切り拠点のマンション近くで倒れていたところを彼に助けられたそうだ。

伝聞形式なのは、その時の事を私自身ははっきりと覚えていないからである。
覚えているのは、薄れゆく意識の中背負われた背中の大きさと温かさだけ。

その時は狼フォームをとっていたアルフによると、彼は気を失った私を背負って部屋まで運び、私の傷の手当をした上で私をベットに寝かしつけてくれたそうだ。

翌日まだ痛む体を起してキッチンに行くと、テーブルの上に一枚のメモとバケット、サラダ、ミニハンバーグ、コンロには鍋にスープとココアが用意されていた。
メモの内容は電話番号以外はその時は分からなかったけれど、なんとなく私の事を心配してくれている事だけは分かった。だから、私はそのメモを折りたたみなくさないように大事にポケットにしまった。
その後、彼は私達を心配して何回か家に足を運んでくれていたようだが直接会う事はなかった。

ジュエルシードの一件が全て片付いて時空管理局に収監される際、彼にお礼を伝えていない事だけが心残りだった。





「あ~こいつ、こいつだよこいつ。」

「どうしたの、アルフ突然」

PT事件の裁判で管理局に収監されている間、海鳴で出来た初めての友達なのはとのビデオメールのやり取りが許され何度目かのメールを受け取ってアルフと一緒に見ていた時、アルフが画面に映る一人の男の人を指差して驚く。

「いや、あの時フェイトとあたしを助けてくれた奴。」

「えっ、ホント。」

画面に映っていたのはなのはのお兄さん、無愛想だけどどこかやさしげな人。
なのはに会いに行く楽しみがまた一つ増えた。会ったら、あの時のお礼を言おう。





その後実際に再会したのはなのはがヴィータ達に襲撃された時、イレギュラーで結界内に残っていた彼がヴィータの攻撃を受け止め反撃しているところだった。魔法を使えないはずなのに相手を圧倒するその闘い方を目の当たりにしてショックを受けた。

気を失ったなのはと共にアースラに来てもらった時に、前に助けてもらったお礼とその時にあった事、自分の出生の秘密を打ち明けた。



「ごめんな、フェイト。力になると書き残して置きながら、肝心な時に何もしてやれなかった。」

「そんな事ありません、恭也さんが助けてくれたから私はなのは達を・・・プレシア母さんを信じられた。」

「そうか、ではもし許してもらえるなら俺の友人になってもらえないか。」

「いいんですか、私は魔道生命体であって人ではないんですよ。」

「フェイト、俺は人を人たらしめているのは心だと思う。誰かを愛しく思ったり、助けたいと思ったり、逆に憎く思ったり複雑な思いを抱けたり、考える事が出来るのが人間だと思う。そういう意味では、今悩んでいるフェイトは立派な"人間"だ。そしてその悩みはフェイトだけの物であって、アリシアのものじゃない。」

「それでも、私は創られたモノなんです。」

「そうして生まれてきた事に何か罪があるのか?
実際俺の友人に君と同じような生まれの人が何人かいる、自分の持てる力を使って他人を助ける仕事をしている彼女達は本当に尊敬できる人だ。
それに俺は友になるのに正直相手が生物学上の"ヒト"であるかどうかは全然気にしていない、機械であれ妖怪であれ心を持ったモノであれば分かり合う事も出来ると思っている。

俺は『フェイト』と友人になりたいんだ。」



嬉しかった私を"私"として見てもらえたことが。
あの時の言葉は今でも私の心の支えになっている。


海鳴に住むようになってから、私は恭也さんに近接戦闘の稽古をつけて貰うようになった。
シグナムに手も足も出なかったのが悔しかったから少しでも強くなってなのはをみんなを守りたかった。

理由を聞いた彼は力の使い方を間違えないようにとだけ忠告した上で色々教えてくれた。
間合いの取り方、力の流し方、闘いの駆引きそれら全てに一切の無駄がなく、その後のシグナムとの戦闘も互角に出来るようになった。



闇の書事件の後もたまに稽古をつけてもらったり、翠屋でお話をしたりした。



それから2年後なのはが重態に陥った時、私達を一切責めることなくむしろなのはを責めたことが私には信じられなかった。
なのはが誰よりも恭也さんに認めてもらいたくて頑張っていたのを知っていたから、そしてそんななのはを恭也さんが誰よりも大切にしている事を知っていたから。

でも今なら分かる、彼は事件の責任を感じて押しつぶされそうになっていた私達を守る為にわざわざあんな言い方をしたと。なのはに責任があるなどとは露ほども思っていなかったはずなのに、そう表現する事でなのはの負担を減らそうしていたと。

中学を卒業して管理局で本格的に働くようになってからあまり会う機会もなくなってしまったけれど、海鳴に帰った時はよく相手をしてもらっていた。





今回の事件
相手を心から思いやれる彼が意味もなく人を殺すとは到底信じられなかった。
だから自分なりの方法で真実を探してみよう。
それが昔私を助けてくれたあの人と、今一番傷付いている親友を助けることにもなると思うから。
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