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58章 本棚5 [リリカルなのはss]

(たくッ、人使いが荒いぜウチのボスはよ)
独りごちりながら、ボブと一緒にエレベーターでB2に向う。

「しっかし、もう少しでお楽しみの時間だな。
見た感じロングの女はバージンっぽいしな、久しぶりに女を堪能できそうだぜ。
まぁもっともボスのおこぼれになる可能性が高いけどな、お前もそう思うだろ。」

エレベーターを降りて静かな廊下を移動中、後ろにいる相棒に声を掛けるも反応がない。
普段から何を考えているのか分からない無口な奴だが、無視されるのも流石に腹が立ったので後ろを振り返るとそこには誰もいなかった。

(野郎、さぼりやがったな。)

どうやら一人でどこかに行ったようだ。
薄情な相棒に悪態を吐きながら、モニタールームの扉を開ける。

しかしなぜか、そこで待機予定のメンバー2人はおらず閑散としていた。
壁面に設置された10台程のモニターが屋内外のリアルタイムの映像を映し出している、各モニターをチェックするも特に異常はなさそうだ。

どうせここの奴らも退屈な役目に嫌気がさしてさぼってんだろう、そうあたりをつけて監禁部屋のボスに内線を入れるも呼び出し音が鳴るだけで一向に出る様子がない。
諦めて内線を置くと、モニター越しにボスが気の強そうなショートカットの女と何か話しているのが見えた。
少し気になったので音声をオンにして会話を傍受する。


("悪霊"ね・・・)
俺の仕事は終わったとばかりに元の場所に戻るべく、エレベーターを呼び扉の前で女の突飛な発想に苦笑する。

ヴィーン

階を移動していなかったエレベーターのドアが スー と開く。
篭に乗り込む際に何かの違和感を感じる、ドアが閉まってB3のボタンを押したところでそれに気付く。
ドアに赤い液体が付着していた。

(・・・まさかな・・・)

ポツン

ゆっくりと降りて行く中、首筋に水滴が当たる。
左手で拭ってみれば、指先が赤く染まっていた。
慌てて上を見れば天井一面に赤い染みが広がっている。

UwaaAAA

gan gan gan gan gan gan gan

声にならない雄たけびを上げながら、手にした銃の全弾を天井に向って撃つ。

チーン

エレベーターがB3に到着して扉が開き外に飛び出そうとしたその時、血まみれのザンバラ頭の男の顔が上下逆にして俺の目の前に現れた。

ヒッ

思わず尻餅をついた所で後頭部に強い衝撃を感じて俺は意識を失う。

58章 本棚4 [リリカルなのはss]

「余計なこと喋ってんじゃねえよ、テメェはよ。」
「スマネ、ボス。」

続いて入って来たのはがっしりした体格に目つきの鋭い角刈りの30前後の腕に入れ墨のある男と、40代くらいの性格のきつそうな眼鏡を掛けた痩せ形の女。

「クライアントと今後の方針が決まった。予定通り計画を進めるから、取りあえず朝まではこのまま待機だ。」
「了解、ってことは約束通り後で喰っていいってことだよな。」
「ああ、声明を公開した後は好きにしていい。そうだよな、クライアントさんよ。」
「ええ、それで構わないわ。」

ボスと呼ばれた男と今回の依頼主と思われる女の肯定を受けて、痩せ男は厭らしい目つきですずかの身体を舐めまわす。

「おら、そんなもの欲しそうにしてねえでテメェ達も見周りに行け。
安物の無線機何ぞ使うからさっきから上手く通信も出来ねえし、B2のモニタールームの内線に誰も出やしない。
見回りついでに覗いて、さぼって居眠りしてたら叩き起こしてこい。」

「了解、了解。おい、ボブ、行くぞ。」

仲間を連れて、部屋を出て行く痩せ男。
部屋に残ったのはボスの男と依頼主の女。

「じゃあ、私は朝まで別の部屋で休ませてもらうわ。
くれぐれも逃がさないようにね、何かあったら起こしてちょうだい。」
「あいよ、お休み。」

続いて出て行く女。
最後に残ったのはボスの男、ダメ元で今回の計画の内容を尋ねる。

意外にもあっさりと教えてくれた、別にクライアントに口止めされているわけでもないとの理由からだったらしい。
それによると彼女は私達の親友でもある八神はやてに個人的な恨みがあるらしく、それを晴らすために今回の事件を起こしたとのことだった。
計画によれば監禁された私達の動画を全管理世界に一般公開した上で、解放して欲しくばはやてが管理局に入局するに至った経緯を包み隠さず公表することを要求し、受け入れられない場合は人質の安全は保証しないとの声明を発表するつもりらしい。

はやて達の事情にそこまで詳しいわけではないが、守護騎士とされるシグナム達の過去の重罪の司法取引で管理局に縛られているということは何となく理解はしている。
加えて管理局がその事実を公にしたくない(いやできないか・・・)のも知っている。

仮に事実を公表したとすれば"犯罪者"とのレッテルを貼られ非難され、要求を受けず私達に被害が及べは"無血漢"として世間からの支持を失う、つまりそれが目的なのだろう。


「それはそうと、嬢ちゃんはどう思う?
さっきからやけに空気が静かなんだが・・・」

唐突にふられた質問にどう答えようか一瞬迷う。
繋がらない無線、連絡の取れない仲間…もしかしたらという淡い希望、もしそうなら少しでも正解から相手の思考を遠ざけるべきだ。

「さぁ、分からないわ。でも、もしかしたら悪霊の仕業かもよ、知らず知らずの内に一人ずつ消されているのかも。」

「ハッ それは傑作だ。確かにあり得ん話じゃないな、何せここは政治犯収容所だった所だ拷問なんぞ日常茶飯事だったし、獄中死も相当の数だからな。」

しばらく呆けた後大笑いしながらゆっくりと移動し、すずかの後ろに立つ。

「おとぎ話の"王子さま"の次は、ホラー小説の"悪霊"か、嬢ちゃんは読書家みたいだな。」
「それは、どうも・・・」

どっちかっていうと、それはすずかの方なんだけどなとおもって男を眺めていると奴は厭らしい笑みを浮かべて続ける。

「だが俺はポルノ小説の方が好きだな。」
「何をするつもり!?」

「なに、後でも先でもやることに変わりはないしな。
それにモニター室の奴らも退屈してるだろうから、生ポルノを見せてやるのさ。」

そう言って、すずかの肩に手を掛ける。

「すずかに触れるんじゃないわよッ!!」

「そう、やっかむな・・・、後で一緒に可愛がってやるからよ。」

私の怒号に怯むでもなく呆れたような笑みを浮かべながら、あの子に顔を近付ける。
男の吐く息があの子の耳元にかかりビクッと震えた瞬間、風が舞った。

58章 本棚3 [リリカルなのはss]

「誰を待ってるか知らねえが、誰も来やしねえよ。」

後ろのドアを乱暴に開けて入って来たのは、昼間しつこく声を掛けてきていた片割れの痩せ形の男。
もう一人ボブカットの根暗そうな男がついてきていた。

「何せここは、お前達のいた97管理外世界でもなければ管理局様の威光の届く管理世界じゃない上に強烈なアンチ管理局の管理外惑星だからな。
管理外世界の住人の為にあいつらが動く事なんぞあり得んし、よしんば麗しい友誼で"お友だち"が助けに来てくれたところでこの場所には到底辿り着く事はできないからな。」

どうやら私達は、なのは達絡みで地球から別の惑星に連れて来られたらしい。
戸惑う様子を見せるすずかの様子に気をよくしたのかさらに饒舌になる男。

「この部屋は今は亡き独裁国家の政治犯収容所の地上一階、地下三階の建物の最深部。
地上からここに来るには、一階の正面出入り口から入って長い一本道の廊下の突き当たりのエレベーターか階段で地下一階に下りた後、今度は逆方向に再度進んでからエレベーターか非常階段で地下三階に下りた後、一番奥にあるこの部屋に向うことになる。」

有り得ないことではあるとは思うが万が一の自力脱出の為に経路図を頭に叩き込んでいく。

「当然、入り口や階段周りには見張りが立たせてあるし、地上、地下共に廊下の両脇の部屋に拳銃やナイフで武装したメンバーが待機加えて各所に設置した集音マイク付きの監視カメラで逐一状況を把握できるようになってる。
もちろん魔導師対策もバッチリだ、各所に埋め込んだ強力なAMFがSSSクラスの魔導師も唯の一般人に成り下がるようになってる。
まずこれだけやれば、逃がすような事もあるまいが念の為建物周囲にトラックに分乗した仲間が待機して事が起きればものの数分で駆け付けて外からも制圧できる体制も敷いてあるのさ。」

自分達の防衛計画に酔っているのか恍惚とした表情で警備体制を暴露す、それに対し絶望の表情を見せることなくむしろ希望の光を見出した様子の私に小馬鹿にしたような態度で男は吐き捨てる。

「けっ、おとぎ話の読み過ぎなんだよ。
『きっと、"王子さま"が助けに来てくれる』ってか。」

58章 本棚2 [リリカルなのはss]

ハッ

目覚めて体を起こそうとして自由が利かない事に気付く。
見ればどことも知れない無機質な薄暗い一室で両手両足を縛られ拘束された状態でソファに座らされていた。
斜め向かいには同様の状態の親友の姿、未だに目覚めていないようではあったが着衣の乱れもなく静かに上下する胸元に安堵する。

ツッ・・・

気の緩みが出た所で、右の脇腹辺りに軽い痛みを覚え顔をしかめる。

(全く、痕でも残ったらどうしてくれるのよ。
恭也さんに見られたら恥ずかしいじゃない。)

そんな事を思ってから、そこを見られる具体的な状況を思い浮かべて一人真っ赤に頬を染める。
勝手な妄想に身悶える自分に頭を抱えたくなるも、両手を後ろで縛られている現状では物理的にできず頭を激しく横に振って幻影を追い出す。
一人で喜劇を演じていると、向いの眠り姫が薄っすらと瞼を開き目覚めたようだった。

「気が付いた?すずか。」

「アリサちゃん。」

私の呼び掛けに反応するも、置かれた状況からその瞳と声は不安に揺れていた。
(それが当然の反応よね…)
そんなすずかの様子を見ながら妙に落ち着いている自分に内心苦笑してしまう。
(流石に三度目ともなれば慣れもするってもんでしょ、むろん慣れたくもなかったけどね…)
でも今はそんな事より、不安で押し潰されそうになっている親友を勇気付ける方が先。

「大丈夫よ、すずか。
どうやら犯人は私達の命が目的って訳でもないみたいだからすぐに殺されることもないし、日付が替わっても帰宅しなかったら家の誰かが異変に気付いて助けに来てくれるわよ。」

なるべく明るい口調で励ますものの、まだその目に不安は消せない。
そこで私は魔法の言葉を掛ける。

「大丈夫、必ずまた助けに来てくれる、そうでしょ。」
「うん、そうだね。きっと来てくれるよね。」

名前は出さなかったけどあの子にも私の思い描いた人が伝わったようだ、その瞳と声に震えは既になくあの人に対する信頼のみ窺えた。

58章 本棚1 [リリカルなのはss]

街中に買い物に出掛けたら、またしてもチャラ男達に絡まれてしまった。
先日の学祭で遊びに来てもらったOBの恭也さんへのラブラブっぷりを見せつけた学内では、減ってきていたのだが街中では無意味だったようだ。

確かに自らの容姿が世間一般レベルにおいて上位クラスであるとは自覚はしてはいるつもりではあるが、輪をかけて周りが極上の美女ばかりなので自信をなくすこともしばしば。
現に男達は鬱陶しげにあしらう私よりも、隣にいる親友に熱心に声を掛けている。
濃紫に近い緩くウェーブのかかった長い艶のある髪、慈愛に満ちた柔らかい目元。
襟の詰まった上品なブラウスの上からでも分かる豊かな胸元。
彼女は困惑した様子を浮かべながらも、生来の優しい性格からか真面目に受け答えをしている。

付き纏いがあまりにもしつこくいい加減腹が立った私は、男達に聞かせるように彼女に声を掛ける。

「すずか、ハッキリ言ってあげなさいよ。『私は、彼以外の誘いは一切受けません。』って。」
「アリサちゃん・・・。」

すずかが苦笑しながらも、同意するように頷く。
それを見て満足気に私が男達に宣言する。

「というわけだから、とっととどこかに行ってちょうだい。
あんた達に付き合っていられるほど私達は暇じゃないの。」

その言葉を聞いて私の傍にいた男の眼光が鋭くなり、顎をしゃくって相方に指示を出す。
それを受けてもう一人の男が布切れをすずかの口元に押し付ける。

「なっ【バチッ】
抗議の声を上げようとした瞬間、脇に強い痛みを感じ気を失う。
朦朧としていくなか聞こえたのは男の呟き。

「大事な餌だからな、丁寧に扱えよ。」

57.5章 The END [リリカルなのはss]

「はぁ・・・君は今忙しくて寝る間もないんじゃなかったのか?」

本局の談話室でフェイトちゃんと何やら話している次回作の主演俳優を見つけ、勢い込んで台本を持ちこむも一読して溜息まじりに返されてしまった。

「そうや、性懲りもなく提出された機密保護法を廃案に持ってかなあかんもんですから。
私かて機密の保護の必要性は認めるんよ、でもあの内容はありえへん。
"何が秘密かは秘密"なんて危なっかしくてしゃあないですよ。
うっかりフェイトちゃんのスリーサイズを洩らしたらそれで捕まる可能性だってあるんですから。」

「そんな大変な時に、映画の脚本を書いていたと・・・?」
「い、いや、それは日々のプレッシャーの息抜きの為といいますか・・・、各ファンクラブからの次回作要請が日に日に増しているといいますか・・・お菓子の買い過ぎで予算が底を尽きつつあるといいますか・・・。」

「どちらにしても、却下だ。大体、身内以外巻き込んで迷惑掛けてどうする。」

「そんな、夜も寝ずに恭也さんに弾を当てる方法を考えたのに・・・」
「お前は俺を殺す気か・・・」

ダメ出しをされてがっくりその場で崩れるはやてに、恭也さんが呆れる。
答えを聞いて苦笑いを浮かべる彼女に彼が一言。

「それからなはやて、条件にもよるがフライパン2枚ではライフル弾は防ぐのはまず無理だぞ。
貫通して、ジ・エンドだ。」

57章 抹消9 [リリカルなのはss]

「そのキーを捨ててもらおうか・・・」

突如として現れた空間ウィンドウに現れたのはどこかの艦船のブリッジで提督と思われる人物の首筋に刃を突き付ける恭也さん。
その顔色は血の気が足りておらず真っ青で、胸に巻かれた包帯も既に真っ赤に染まっていた。

そして件の提督の手には、アルカンシェルの始動キーが握られておりファイアリングロックシステムも既に立ち上がっていた。


「いいだろう、貴様がここにいる以上地上に向けて撃ったところで意味をなさないわけだしな。」

持主の手から解放されたキーが重力に引かれて床に落ちる。
床に落ちたキーを彼が飛針を投擲して物理的に破壊する。

「続いて、地上のお前の部下達に戦闘行為を中止させろ。」
「まぁ、それは構わんよ。いま、この場でケリを着ければいいだけのことだからな。」

提督のその言葉に呼応して、ブリッジ内に完全武装した戦闘員がなだれ込んでくる。

「さあ、どうする?私と違って、碌にバリアも張れない出来そこないの君に逃げ道はないよ。」

「笑わせるな、元から逃げるつもりなどないさ。
それより自分の事を心配した方がいいんじゃないのか、味方を確実に死に至らしめるような攻撃を躊躇なく実行する上に下が最後まで従うものなのか?お前がここで死ねば、彼らを擁護してくれるような人物はいないと見たが・・・」

「クソッ、構わん!! 殺れ、お前達。」


BAANNN

一発の発射音が響き、サーチャーからの映像が途切れる。

57章 抹消8 [リリカルなのはss]

医院のスタッフの技量の高さと何より患者の身体能力の高さのおかげで、難手術は何とか成功した。
とはいうものの一時的に一命を取り留めたというだけのことで、まったくの予断を許さない状態であることには変わらない。

手術台からICUに移動させるためストレッチャーに移し、廊下に出たところで脇に置いた患者の私物を入れた篭から携帯の着信音が鳴る。
しばらくして留守電に変わり、発信者からのメッセージが吹き込まれる。
聞こえてきたのは妖艶な響きの女性の声、その内容は驚愕に値するものだった。

『お相手は相当焦れたみたいね、衛星軌道上から警告なしに魔導砲を撃つつもりみたいよ。
座標はメールで送っておくわ、お代は今度会った時にベットの上でね。
・・・守りたいなら急ぎなさい、恭也。』


クッ

「な、駄目です、置き上がったりしたら。
あなたは重傷を負って、絶対安静の身なんですよ。」

メッセージの内容の真偽を脳内で吟味していると、後ろから看護士さんの慌てる声が聞こえた。
まさかと思って振り返れば上半身を起こし、ストレッチャーから降りようと床に足を付ける彼の姿。

「何をやってるんですか!! 恭也さん。」
「シャマル先生、今すぐ俺をその座標に転送して下さい。」

「何を馬鹿なことを・・・そんな事できるわけないじゃ「いいからやるんだ。」ないですか。」

「すみません、でも時間がないんです。」
「それならザフィーラに行ってもらえば・・・」

「それでは駄目なんです、相手は俺がここにいる限り魔導砲を撃ってきます。
それを防ぐ為には奴の目の前に俺自身が行く必要があるんです。」

「・・・分かりました、でもせめてみんなに状況が伝わるようにサーチャーだけは付けさせて下さい。」

包帯で巻かれた裸の上半身に血染めの黒のジャケットを羽織り、『香月』と『八景』を携えた恭也さんをメールに記載された座標に送る。

57章 抹消7 [リリカルなのはss]

(あーもう、次から次へと鬱陶しい。)

八神課長からの新たな命に従い、私とスバルは108部隊の小隊長の傘下で正体不明の敵と戦っていたがどこからそんなに湧いてくるのか倒しても倒しても一向に敵兵が減る気配がない。

「スバル、後ろッ」

気付けば一人突出していた、スバルの後ろに二発の魔力弾が肉薄していた。
今からじゃフォローが間に合わない・・・

バン
バン

「まったく、あいつの周りは危なっかしい子ばかりだな・・・」
「同感だ。」

魔力弾を弾き飛ばした二人の男。

「バレットさん!? とあの時の人」

一人は応援に駆け付けてくれたなのはさんに驚きの様子で名前を呼ばれた西洋剣を持った壮年の男性、もう一人は前にこの世を滅ぼすと予言された少女を殺害するために暗躍した元エージェントの青年。
どうしてここにいるのかという、なのはさんの問いにそれぞれ答える。

「不破には借りがある。」
「俺も同じだ、それに妹からの依頼だからな。」


なのはさんが二人にお礼を述べて、改めて協力をお願いしたところで八神課長から現在各方面から応援がこちらに向っているという心強い連絡が入る。
あと20分も持たせれば聖王教会の騎士カリムの部隊をはじめ恭也さんを慕ってくれている各隊が駆けつけるとのこと、そうなれば"質""量"で勝る私達の勝利は確実だ。

57章 抹消6 [リリカルなのはss]

三佐によれば緊急配備を敷いた各地の検問所の内、数ヶ所で所属不明の装甲車がこちらの制止を無視してゲートを破り市街に進行をしているとのことだった。
進行予測ルートを解析したところ全てが病院に向っており、何らかの統一の意思を持って組織行動を起こしている事は明白。

こちらもその動きを阻止するために、行動を開始するも相手方はアサルトライフルをはじめとした質量兵器と非殺傷設定を外した魔法攻撃で反撃をしてきた。
その攻勢により既に数人の負傷者が出ており、部隊を編成し直して病院に通じるルートを固めた今も予断を許さない状態にあるという。


その連絡を受け、はやてちゃんがメンバーに素早く新たな命令を下す。

「特捜課各員は速やかに108部隊と合流し、現場指揮官の指示に従い敵勢部隊の排除に当たれ。
フェイトちゃん、私達も出るで。」

「了解、なのは私も出るね。
すぐに片付けて戻ってくるから心配しないで。」

「ザフィーラ、シャマルやみんなを頼んだで。」

「承知」



二人が飛び出して行った後、待合室に青い顔をしたクレアさんが入って来た。
どうやら今までの会話を聞かれてしまったようだ。

「あ、あの・・・なのはさん。」

「どうしました?クレアさん」

「わ、私も戦います。」

買ってきたばかりのフライパンの柄を両手に持った彼女の表情は強張り、膝はカタカタと小さく震えていた。
無理もない、今まで暴力なんて無縁の世界で生きてきた人だ。
そんな人が命を落とす可能性のある戦いに恐怖しないわけがない。

「クレアさん、無理はしなくてもいいんですよ。
みんなが必ず守ってくれます。それに、あなたの持っている道具は人を傷付けるためのものじゃなく、その料理で人を笑顔にさせるものですよ。
兄が目覚めたら、またオムレツを作って頂けますか?きっと、兄もその方が喜びます。」


「雫ちゃん、クレアさん達を守ってあげてね。」
「はい、お父様に代わって必ず守り通します。なのはさんもお気を付けて・・・」

雫ちゃんに見送られながら私も出撃するべく屋上に向う。

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